日本大百科全書(ニッポニカ) 「キラリティー」の意味・わかりやすい解説
キラリティー
きらりてぃー
chirality
分子構造あるいは結晶構造において、ある位置の点群が第2種対称要素である転義回転軸(回反軸)をもたないときに、それを示す用語。回反軸のかわりに回映軸とする表現もあり、1回回反軸(2回回映軸)は対称心、2回回反軸(1回回映軸)は鏡面と等価であるため、対称心、鏡面、回反軸をもたない、とも表現される。このような構造では、その実像と鏡像とは重ね合わせても一致せず、互いに対掌体となる。「手のひら」を意味するギリシア語cheiroから1893年イギリスのケルビンが提案したが、広く用いられ始めたのは、20世紀後半に入って立体化学が発展するようになってからである。なお形容詞はキラルchiral、キラルでないものをアキラルachiralという。
[岩本振武 2015年8月19日]