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キリスト教神学 キリストきょうしんがく theologia Christiana; Christian theology

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

キリスト教神学
キリストきょうしんがく
theologia Christiana; Christian theology

教会を背景としつつ,その教えの内容や信仰生活の規制にかかわる諸問題を,体系的に扱おうとする知的努力の総体。キリスト教も独立の歩みを始めた瞬間から,周囲の地中海文化圏の,競合する宗教や思想と一線を画しつつ布教するために,適切な用語が求められた。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

キリスト教神学
きりすときょうしんがく

キリスト教の信仰内容を対象とする学問。[熊澤義宣]

神学の語義と変遷

神学という用語の起源となっているギリシア語のtheologiaは、元来はキリスト教の用語ではない。それは、古代ギリシア文学においては神々の世界のことを物語る神話であり、神々の信託を伝える預言を意味することばであった。神学は古代ギリシア哲学では形而上(けいじじょう)学の一部と理解され、ストア派においては都市国家の祭儀にかかわる実践的な性格をも論ずるものとなった。これがキリスト教文献に登場してくるのは、2世紀以後のギリシア弁証論者によってである。だが、その場合もキリスト教的な意味ではなく、異教的な意味で使われた。キリスト教古代、たとえばアウグスティヌスに至って、神学ということばが初めてキリスト教的な意味で用いられるようになるが、なお異教的なものも並行して用いられていた。これが主としてキリスト教神学を示すようになるのには中世を待たなくてはならなかった。[熊澤義宣]

キリスト教神学の概念

神学theologiaは元来、神theosに関する学logosであるから、それがキリスト教化された場合でも、キリスト教の神に関する学という意味で神論を意味した。しかし、キリスト教神論がユダヤ教や他宗教の神論に対してもっている特色として、三位一体(さんみいったい)の神であることが主張されるに及んで、神学は三位一体論をさす語となった。さらに、そのなかにも含まれているように、父・子・聖霊の第二位格である子(イエス・キリスト)が神であるということから、神学はキリスト論、その受肉(インカーネーション。人間としての肉体をとること)に関する論議、その神性、さらにはその神性と人性に関する論議などをさす語ともなり、その受肉が救いのためであることから、神学は救済論を意味するものとなり、神論を意味する狭義の神学から、キリスト教のすべての教えを意味する広義の神学までの幅をもつ用語となった。[熊澤義宣]

キリスト教神学の性格

カンタベリーの大司教であったアンセルムス(11~12世紀)は「知らんがために我信ず」と述べているが、このことばは、学問としての神学の理性的認識と、神学に携わる者のもっている主体的な信仰の関係が明確に示されている。神学とは主体的な信仰を前提として成立する学問なのであって、この意味で、単純に理性活動である学問とは違った性格をもつものである。したがって、宗教学の一分野であるキリスト教学と神学とは、対象とされているものに関しては多くの共通性をもつが、主体的な条件として信仰の有無を問う神学と、それを不問にするキリスト教学とは、対象面ではなくて、主体的面において区別される。他方、神学は学問的検証を問わない単純な信仰とも区別される。このようにキリスト教神学は、宗教学、キリスト教学をも含む他の諸学問とも、素朴な信仰の営みとも区別される、キリスト教信仰に基づく学問としての性格をもつ。このようなキリスト教神学は、キリスト者の信仰共同体としての教会が、絶えず、自らの立場を明らかにし、学問的に検証を重ねる必要から生まれ、異端思想との闘いのなかから展開していったために、教会性をもって基本的特色としてきたのである。[熊澤義宣]

キリスト教神学の歴史

教会の学としてのキリスト教神学は、教会の展開に即して発展をしていったといえよう。エルサレムに誕生し、ヘレニズム世界に発展していった原始教団の流れは、やがて東方教会(ギリシア正教会)となり、西方教会(ローマ・カトリック教会)の神学が合理性、倫理性を強くもつのに対して、形而上学的性格、神秘性を特色とする神学を形成していった。西方教会の神学を集大成したのは、13世紀のトマス・アクィナスの『神学大全』であった。「恩恵は自然を破壊することなく、それを完成する」というトマスの命題は、人間の自然的本性と神の超自然的恩恵の調和を説くものであって、前者に基づく一般諸学に対する後者の優位性を説き、一般諸学を「神学の侍女」として位置づける中世的特色を明らかにするものであった。西方教会は、16世紀に至ってローマ・カトリック教会に対する宗教改革によって新しい展開を示し、ローマ・カトリックとプロテスタントとの間に中道の神学を特色とするイギリス国教会(イングランド教会)の神学も生まれた。プロテスタントの神学は、ローマ・カトリック神学に対して、聖書の排他的権威、神の排他的恩恵による救済(信仰義認論)、聖俗の身分的区別の排除(全信徒の祭司性)などを特色として発展し、ルター派教会、改革派教会の流れ、さらにはイギリス、アメリカ合衆国などにおける諸教派の流れにしたがってそれぞれの特色をもった神学を形成してきた。プロテスタント神学の古典的集大成としてはカルバンの『キリスト教綱要』がある。[熊澤義宣]

現状と将来

4世紀のコンスタンティヌス大帝のキリスト教公認以来、ヨーロッパに形成されてきたキリスト教世界における神学は、二度の世界大戦によって大きな衝撃を受けた。啓蒙(けいもう)主義時代を経て、19世紀にきわめて楽観主義的、進歩主義的、人間主義的になっていた近代自由主義神学は、第一次世界大戦によってキリスト教世界が幻想にすぎないことに衝撃を受け、1918年に『ロマ書』をもって登場したスイスのプロテスタント神学者K・バルトを中心とする弁証法神学運動によってやっと活路を得て新しい時代を迎えた。さらに、第二次大戦の経験を経て、教会と世俗世界の関係について積極的な関心をもつようになった。ヨーロッパではキリスト教福音(ふくいん)の非神話化を唱えたR・ブルトマンをはじめ、世俗化論を唱えたD・ボンヘッファー、F・ゴーガルテンなどが活躍し、アメリカではH・コックスや神の死の神学、状況倫理などが現代世界との取り組みに苦闘した。1970年代前後からはヨーロッパの希望の神学者J・モルトマン、歴史の神学を唱えたW・パンネンベルク、アメリカではプロセス神学者たちや、J・コーンなどの解放の神学が活発に展開されている。ローマ・カトリック教会では第二バチカン公会議(1962~65)を開き、現代世界に対する教会のあり方を再検討し、全キリスト者の一致を求め、内的に刷新し、他宗教に対しても開かれた姿勢をとろうとしている。将来の神学は、ますます現代化、一致(エキュメニズム)、革新、他宗教の問題を積極的に取り上げざるをえないだろう。[熊澤義宣]

日本・アジアにおけるキリスト教神学

1859年(安政6)の宣教師来日以来、自立的な国民教会の形成を志した植村正久、近代的自我と取り組んだ高倉徳太郎を経て、学問的体系を残した熊野義孝、『神の痛みの神学』で世界に知られる北森嘉蔵などがプロテスタント神学者として出ており、カトリック神学者としては岩下壮一、吉満義彦などが出た。東南アジアでは、西欧の神学をアジアの立場から批判的に受容するアジア的批判原理が説かれ、民衆に焦点を置く韓国の民衆(ミンジュン)の神学が注目されてきている。[熊澤義宣]
『ピエール・アドネス著、渡辺義愛訳『カトリック神学』(白水社・文庫クセジュ) ▽ロジェ・メール著、波木居純一訳『プロテスタント神学』(白水社・文庫クセジュ) ▽C・H・ジャーマニー著、布施濤雄訳『近代日本のプロテスタント神学』(1982・日本基督教団出版局)』

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世界大百科事典内のキリスト教神学の言及

【神学】より

…有神論をとる個別宗教の信仰や教義をその立場で研究する学問。日本語では神典,神道を研究する学問をさしたが,現在では英語theologyの訳語として主としてキリスト教神学をさして用いられる。theology(ドイツ語Theologie,フランス語théologie)はギリシア語のテオスtheos(神)についてのロゴスlogos(言論,教え,説明)を原義とするテオロギアtheologiaに由来する。…

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