クオ・バディス(読み)くおばでぃす(英語表記)Quo Vadis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クオ・バディス」の意味・わかりやすい解説

クオ・バディス
くおばでぃす
Quo Vadis

ポーランドの作家シェンキェビッチの長編歴史小説。1896年刊。狂気と淫乱(いんらん)の生活を送るローマ皇帝ネロキリスト教の信仰を広める使徒ペテロパウロ信徒の少女リギアを恋する青年貴族ビニキウス。ネロはひそかにローマの都に火を放ち、その罪をキリスト教徒にかぶせようとする。信者の大虐殺が始まり、リギアも捕らえられて水牛に引き裂かれそうになるが、忠実な召使いウルススが水牛と戦って勝ち、感動した人々の命乞(ご)いで救われる。ペテロとパウロも殉教し、やがてネロの運命の尽きる日が訪れる。題名ラテン語で「あなたはどこへ行くか」の意で、ペテロが十字架に赴くキリストに問いかけたことば。作中のリギアはポーランド女性、ウルススの怪力はポーランド国民の力を示し、作者はこの作品で、正義と真実の勝利を訴えて、迫害されるポーランド民族の運命に希望を与えた。

[吉上昭三]

『吉上昭三訳『クオ・ヴァディス』全2冊(旺文社文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クオ・バディス」の意味・わかりやすい解説

クオ・バディス
Quo Vadis?

ポーランドの作家ヘンリク・シェンケーウィチの歴史小説。1896年発表。3巻。題名はラテン語で,新約聖書ヨハネによる福音書』(13・36)の「主よ,どこへ行かれるのですか」に由来する。ローマ帝国の暴君ネロ時代の,初期キリスト教徒の殉教の史実に基づく長編(→初期キリスト教会)。発表時,ロシア支配下に置かれていたポーランド国民の運命を作品に託して,正義の勝利を描いたもの(→ポーランド分割)。1905年にシェンケーウィチがノーベル文学賞を受賞して,世界的なベストセラーとなった。

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