クニマス(読み)くにます

共同通信ニュース用語解説 「クニマス」の解説

クニマス

かつて秋田県田沢湖にのみ生息したサケ目サケ科の淡水魚。水質の悪化で絶滅したと考えられている。成魚体長は30~40センチで、体は全体的に黒っぽい。天皇陛下は2010年12月の記者会見で、約70年ぶりに発見されたクニマスについて「奇跡うおといってもよいように思います」と述べられた。環境省本来の生息地以外で生きている「野生絶滅」に指定している。

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関連語 IUCN 個体

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クニマス」の意味・わかりやすい解説

クニマス
くにます / 国鱒
[学] Oncorhynchus kawamurae

硬骨魚綱サケ目サケ科に属する魚で、絶滅種とされている。秋田県田沢湖(たざわこ)の特産種であった。田沢湖には宝暦(ほうれき)年間(1751~1764)以前から生息していたとされ、この時代にクニマスの名がつけられ、さらにキノスリマス、キノジリマスともよばれたことが伝えられている。比較的近年の、1903年(明治36)青森県十和田湖(とわだこ)から田沢湖に初めてヒメマスベニザケの陸封型)が移植されたが、その当時は少数ながら生息が確認されていた。1940年(昭和15)田沢湖を利用した水力発電所が完成したが、この際に発電の水量を調節するため、近くを流れる玉川から水を導入。玉川は酸性度の高い硬水で、これにより絶滅したといわれている。

 体形はヒメマスに似るが、ヒメマスよりえらの内側にある鰓耙(さいは)数が39~42個と多いこと、腸の始部に付随する幽門垂(ゆうもんすい)も30~60個と少ないこと、体色は全体に黒色で体とひれに黒斑(こくはん)がないこと、吻(ふん)の先端が鉤(かぎ)状に湾曲しないことなど、種々の特徴により1925年(大正14)に新種として報告された。田沢湖で生息中は、一年中100~300メートルの深所に好んですみ、冬季の産卵期には15~30メートルの浅所に移動して産卵した。

[疋田豊彦]

 クニマスの移植に関しては、山梨県西湖(さいこ)および本栖湖(もとすこ)へ放流用の卵を運んだ記録があり、2010年(平成22)、西湖で確認された個体がクニマスであることが報告された。2019年に国際自然保護連合(IUCN)は本来の生息地以外に移されて生きている「野生絶滅」と判断した。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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