クモハゼ(読み)くもはぜ(英語表記)brown goby

改訂新版 世界大百科事典 「クモハゼ」の意味・わかりやすい解説

クモハゼ (雲沙魚)
brown goby
Bathygobius fuscus

スズキ目ハゼ科の魚。千葉県以南に分布し,体の色彩は地域,環境,産卵期などで変化に富み一定しない。第1背びれの後端と第2背びれの前端が連続し,胸びれの上端部の数条が遊離しているのが特徴である。ふつう,海岸線から比較的高い潮だまりの底に生活しており,人のけはいを察知するとすばやく石の下などに逃げ込む。ふつう,雄のほうが雌よりも大きい。3cmを超えると雄の貯精囊の存在によって容易に雌雄判別が可能である。また,雄のしりびれは雌のそれよりも高い。産卵期は6月下旬~9月下旬で,石の下の平らな面や,貝殻などに1層に産みつける。石の下にくぼみをつくりここに雄がとどまり卵を保護する。産卵前後を通じ侵略者を追い払う行動をする。卵は長径1.8mm,短径0.35mmの付着卵で,水温25℃前後で約65時間後に孵化(ふか)する。3歳で6~7cmに達し,幼期には浮遊性橈脚(じようきやく)類(コペポーダ)を食べ,成長後はエビカニ,貝類を摂食する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クモハゼ」の意味・わかりやすい解説

クモハゼ
くもはぜ / 雲沙魚
brown goby
[学] Bathygobius fuscus

硬骨魚綱スズキ目ハゼ科に属する海水魚。暗灰色の地色暗褐色の不規則な斑紋(はんもん)がある。左右の腹びれは合一して杯状をなし、大きい。全長9センチメートルに達する。千葉県および長崎県以南の日本各地に分布。外海性の海岸の潮だまりや浅所で、単独で底生生活を送る。エビ、カニ、巻き貝などの小動物を食べる。産卵期は夏季で、石の下面に卵塊を産み付け、雄親魚がそれを守る。仔魚(しぎょ)は7ミリメートルほどの大きさまで浮遊生活を送る。同属の魚は世界の亜熱帯から熱帯域にかけて広く分布し、日本からも6種類が知られている。

[道津喜衛]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クモハゼ」の意味・わかりやすい解説

クモハゼ
Bathygobius fuscus

スズキ目ハゼ科。全長 8cmになる。体形はハゼ形。胸鰭上部の軟条は遊離している。腹鰭は吸盤状になっている。インド洋,太平洋の亜熱帯および熱帯域に広く分布する。日本では千葉県以南の太平洋岸に分布が知られる。岩礁性の海岸の潮だまりなどでよく見かけられる。

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