クリオグロブリン血症(読み)クリオグロブリンけっしょう(英語表記)cryoglobulinemia

内科学 第10版 「クリオグロブリン血症」の解説

クリオグロブリン血症(血漿蛋白異常をきたす疾患)

(6)クリオグロブリン血症
 1933年にWintrobeとBuellらは,骨髄腫症例の血清サンプル中にクリオグロブリン(cryoglobulin)をはじめて発見して報告した.クリオグロブリンは,0~4℃の低温で可逆性に凝固する白濁沈殿物のことで,ほとんどがIgを含む混合物である.クリオグロブリンは,血管炎,ウイルス感染,リンパ増殖性疾患の症例で検出されることが多い.Brouetらは,沈殿物の構成成分に基づき,クリオグロブリン血症を3つの型に分類した.①Ⅰ型:単クローン性IgでIgGIgMが多い.骨髄腫,マクログロブリン血症,MGUS,リンパ増殖性疾患に伴う場合がある.②Ⅱ型:混合型クリオグロブリンを示すもの.単クローン性で抗グロブリン活性(リウマトイド因子RF)活性)を有するIgMと多クローン性IgGからなることが多い.C型肝炎ウイルスなどの各種ウイルス成分や自己蛋白抗原となり反応して変化したIgGにIgMが反応してできた免疫複合体であることが多い.しかし,基礎疾患の認められないものもまれにある.③Ⅲ型:多クローン性Igによるもの.発症機序はⅡ型と同様であり,IgMによる場合が多い.
 寒冷時に網状皮斑,Raynaud現象,じんま疹,血管性紫斑,四肢末端のチアノーゼなどの循環障害の症状を呈する.Ⅱ型では糸球体腎炎,Ⅲ型では関節痛をきたすことが多い.
 血中Igの増加,RF陽性,血清補体価の低下などをきたす.
 予後は基礎疾患により異なるが,急性の感染症によるものは自然軽快するものもある. 治療は寒冷を避け,基礎疾患に対する治療を行うことである.血管炎や腎炎を発症する症例では,副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の投与,クリオグロブリン除去を目的とした血漿交換やクリオフィルトレーションを行うこともある.[松永卓也]
■文献
Hanamura I, et al: Frequent gain of chromosome band 1q21 in plasma-cell dyscrasias detected by fluorescence in situ hybridization: incidence increases from MGUS to relapsed myeloma and is related to prognosis and disease progression following tandem stem-cell transplantation. Blood, 108: 1724-1732, 2006.
Harada H, et al: Phenotypic difference of normal plasma cells from mature myeloma cells. Blood, 81: 2658-2663, 1993.
Malpas JS, Bergsagel DE, et al: Myeloma, pp1-581, Oxford University Press, Oxford, 1995.

クリオグロブリン血症(リウマチ性疾患)

【⇨ 14-10-20)-(6)】[簑田清次]

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改訂新版 世界大百科事典 「クリオグロブリン血症」の意味・わかりやすい解説

クリオグロブリン血症 (クリオグロブリンけっしょう)
cryoglobulinemia

免疫グロブリンのクリオグロブリンが血清中に出てくる疾患。クリオグロブリンは,ウィントローブM.M.Wintrobeら(1933)によって初めて記載され,ラーナーLernerら(1947)によって命名されたもので,低温(0~4℃)で白濁沈殿し,37℃に加温すると再び溶解する特異な熱不安定性免疫グロブリンの総称である。これには1種類の免疫グロブリンの場合も,2種の混合型から成る場合も,また単クローン性のことも多クローン性のこともある。骨髄腫,マクログロブリン血症,膠原(こうげん)病(全身性紅斑性狼瘡(ろうそう),慢性関節リウマチ,強皮症など),自己免疫疾患,慢性感染症,慢性肝臓疾患,悪性リンパ腫,慢性リンパ性白血病などに随伴してみられることが多い(これを続発性クリオグロブリン血症という)が,まれに基礎疾患がない本態性のものもある。臨床的に無症状のこともあるが,多くの場合,寒冷にさらされた部位の疼痛,関節痛,レイノー現象,壊疽(えそ),紫斑,水疱性紅斑,寒冷蕁麻疹(じんましん),下肢の慢性潰瘍,そのほか血清粘度が増加して過粘稠度症候群がみられることがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クリオグロブリン血症」の意味・わかりやすい解説

クリオグロブリン血症
クリオグロブリンけっしょう
cryoglobulinemia

寒性グロブリン血症,寒冷沈殿性グロブリン血症。クリオグロブリンが血液中に出現する状態をいう。血清蛋白は一般に冷却しても特に変化を生じないが,0~4℃まで冷却すると白濁沈殿を起すものがある。このように寒冷沈殿性を示す血清蛋白をクリオグロブリンと呼ぶ。その大部分は免疫グロブリンに属する病的な蛋白である。クリオグロブリン血症は,基礎疾患のない本態性と,種々の疾患に併発する症候性とに分れる。後者は,多発性骨髄腫,原発性マクログロブリン血症,膠原病,自己免疫疾患,結合織疾患などの際にみられることがある。

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