ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑小高木ないし中高木。小枝に3、4個から10余個の果実が房状でブドウのようにつくため、この名が出た。別名はポメロpomelo、ブラジルで多く用いる。1750年ころにバルバドス島で発見され、ブンタンの実生(みしょう)と考えられている。葉は大きく、広い翼葉がある。花は白色で小形、果実は扁球(へんきゅう)形で200~600グラム、果皮は滑らかで心皮は薄い。果肉は柔軟で多汁、淡い苦味と風味があり、暖地産は甘い。19世紀初期に種子でアメリカのフロリダ地方に持ち込まれ、その後カリフォルニア、テキサスなどに広まる一方、世界の諸方に伝わった。世界の柑橘(かんきつ)産業のなかでは、オレンジ、ミカン、レモン・ライム類に次いで4位を占め、生産量は907万トンに達している(2016)。主産国は中国、アメリカ、ベトナム、メキシコ、インド、南アフリカなどとなっている(2016)。日本には1915年(大正4)にアメリカから入ったが、冬季低温による落果と夏季の高温多湿による「かいよう病」などのため普及しなかった。日本の輸入量(2017)は、7万8100トン、約103億円である。
枝がわりや珠心胚(はい)から発芽する実生変異個体が多い。品種には、果皮が淡黄色から灰緑色のマーシュシードレス、ダンカン、メイ、トライアンフ、淡紫紅色から紅色のピンクマーシュ、ルビーなどがある。ジュースに使用するほか、生食用とする。本種とタンジェリンとの雑種をタンジェロとよび、カラ、セミノールなどよい品種が多い。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
ミカン科の常緑高木。多汁でやや酸味の強い,大きさがナツミカン程度のかんきつ。さわやかな苦みがある。名は香りがブドウに似るということもあるが,多数の果実が房状に結実することに由来する。大木になりやすく,枝はやや下垂する。白色5弁の花が5月上・中旬に房状に咲き,果実も房状に鈴なりしやすい。果皮は黄色のものが多いが紅をさす品種もある。やや厚くむきにくい。果肉は柔軟多汁。肉色は品種により異なり,黄色から薄い紅色まで変異する。クエン酸を1~2%含む。ナリンギンnaringinがあり少し苦い。種子はないかあっても数個。18世紀前半に西インド諸島のバルバドスでブンタンと多胚性品種の自然雑種として生じたといわれる。フロリダへは19世紀の初めに種子で導入され,1880年代になって経済栽培が始まり,ニューヨークなどへ出荷されるようになった。現在は世界各地の温暖な地域で栽培され,生産量は年間約500万t,アメリカがそのうち半分以上を占める。フロリダ州が大産地。ほかにイスラエル,アルゼンチン,南アフリカ,キプロスが主産国。
最初の経済品種である有核(種子あり)白肉のダンカンは1830年ころ生じた。現在の主要品種マーシュ(無核,白肉)は1860年ころ突然変異系統として発見された。初期の有核白肉品種から無核白肉,有核有色,無核有色の品種が派生している。近年は無核赤肉品種が注目されている。赤い色素はリコピンlycopeneである。生食,ジュースなどにするが,大半は冷凍濃縮果汁に加工される。二つ切りし専用ナイフで心を抜き果皮を切り離した後,砂糖をまぶしブランデーを数滴落とし冷やして食べるとおいしい。手搾りした果汁にシロップを加えてもよい。
執筆者:山田 彬雄
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