ゲリラ豪雨(読み)ゲリラゴウウ

デジタル大辞泉 「ゲリラ豪雨」の意味・読み・例文・類語

ゲリラ‐ごうう〔‐ガウウ〕【ゲリラ豪雨】

予期せず短時間に、狭い地域で大量に降る雨を、奇襲を行うゲリラにたとえた語。ゲリラ雨。→集中豪雨
[補説]気象庁では、その地域にとって災害発生につながるような、まれにしか観測しない雨量であることを知らせるために「記録的短時間大雨情報」を発表している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲリラ豪雨」の意味・わかりやすい解説

ゲリラ豪雨
げりらごうう

突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中豪雨に比べると、ゲリラ豪雨は事前に予測することがむずかしい。豪雨で都市の中小河川が急に増水して洪水浸水をもたらしたり、崖(がけ)崩れや土石流などの災害の発生するようすが、小部隊で奇襲をかけ夜襲待ち伏せなどによる変則的な戦闘を主とするゲリラに似ていることから、気象界では1960年代からゲリラ豪雨という呼称が使われていた。ゲリラ豪雨は、新しい積乱雲が次々に派生的に群発しているようなときに降る。積乱雲は地面付近の気温が上昇して上空寒気が流れ込むと発生しやすいが、都市のヒートアイランド現象や高層ビル群による風向きの変化がゲリラ豪雨をおこりやすくしているという研究もある。ゲリラ豪雨のほかゲリラ雷雨やゲリラ雪という呼称もある。なお、ゲリラ豪雨という用語についての学術的な定義はなく、気象庁はゲリラ豪雨を予報用語としては使っていない。

[青木 孝]

『宮澤清治著『近・現代日本気象災害史』(1999・イカロス出版)』『武田喬男著『雨の科学――雲をつかむ話』(2005・成山堂書店)』『三上岳彦著『都市型集中豪雨はなぜ起こる?』(2008・技術評論社)』『牛山素行著『豪雨の災害情報学』(2008・古今書院)』『倉嶋厚著『日本の空をみつめて』(2009・岩波書店)』

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知恵蔵 「ゲリラ豪雨」の解説

ゲリラ豪雨

正式な気象用語ではなく、マスコミなどで主に集中豪雨の代わりとして使われている言葉。大気の状態不安定により突発的に起こる局地的な大雨をゲリラ豪雨と呼んでいることが多い。2008年の例では、兵庫県神戸市の都賀川の急速な増水で5人が死亡するなど多くの被害が発生した7月27~29日の中国・近畿・北陸・東北地方を中心とした大雨。東京都豊島区で下水道工事中の作業員がマンホール内で流され5人が死亡する被害のあった、8月4~9日の関東甲信・東海・近畿・四国・九州地方を中心とした大雨。愛知県で2人が死亡、東京都八王子市で脱線事故が起きたほか、1万棟を超す浸水被害を出した8月26~31日の東海・関東・中国および東北地方を中心とした大雨などがある。なお、気象庁は、8月26~31日の記録的な大雨を「平成20年8月末豪雨」と命名した。
 発生のメカニズムとしては、上空に入った冷たい空気と上昇した地表付近の湿った暖かい空気が混ざることで積乱雲が発達し、大気の状態が不安定になり局地的な大雨をもたらす。例年と違うのは1時間当たりの降雨量で、短時間に集中的に降るのが特徴。「平成20年8月末豪雨」では、愛知県岡崎市で29日の1時間雨量が観測史上1位を更新する146ミリに達するなど、1時間雨量の記録を更新した地点が20カ所を超えた。また、同じ原因にもとづく大雨が1日や2日で終わらず、長く続くことも特徴と言える。
 気象庁では、08年度中に局地的な大雨に関する防災気象情報の利用促進のためのガイドラインを作成するほか、10年度から竜巻などの激しい突風や雷、短時間強雨の危険性の高い領域を分布図形式で表し、10分ごとに提供する「突風等短時間予測情報(仮称)」を開始。局地的な大雨に関する予測技術を高めていく方針。

(桑野優子 フリーライター / 2008年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲリラ豪雨」の意味・わかりやすい解説

ゲリラ豪雨
ゲリラごうう

約 10~数十km2範囲の狭い地域に,時間雨量が 50mmをこえるような豪雨が短時間に降る現象。集中豪雨の一形態。予測が難しく,局地的で突発的に襲うためゲリラという名がつけられ,2008年夏頃からよく使われるようになった。集中豪雨と同様に気象学的には明確な定義はなく,気象庁ではこのような現象を局地的大雨と呼び,ゲリラ豪雨を正式な気象用語としては使用していないが,マスメディアや一部の気象会社が使用している。

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