ゲルマン的共同体(読み)げるまんてききょうどうたい

  • germanische Gemeindeドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

所有のゲルマン的形態に伴う共同体。マルクスは『資本制生産に先行する諸形態』(1857~58)において、生産手段と労働者が自然的に結合している所有の本源的形態を論じ、「自由な小土地所有」の一つとしてゲルマン的形態を置いた。それは「個々の家族長が遠い道のりで隔てられた森林の中に定着」する個人的土地所有である。個々の家が経済整体das konomische Ganzeであり、共有地は不分割のほうが利用しやすい狩猟地、牧草地、伐採地などであって、その利用は共同体(を代表する貴族)によってでも、共同体のためにでもなく、個々の土地所有者の経済を補うためになされる。彼らは血統、言語、共通の過去と歴史などの点で統一性をもってはいるが、土地所有は共同体に媒介されたものではない。共同体は、経済的に自立したこのような家族長たちが相互に所有を保障しあう同盟、紛争を処理するための集会に現れるだけである。都市に集住せず、したがってそこでの官吏ももたない彼らは事実上国家を構成しない。このようなゲルマン的共同体は、タキトゥスの『ゲルマニア』を典拠に19世紀中ごろに理解されていた古ゲルマン社会のあり方には類似しているが、その後定説となった集村的な農耕共同体とは一致しない。また中世ヨーロッパにおいてこれと類似しているのは、村落共同体(農奴の共同体)ではなくて封建的支配層=貴族の共同体(封建的共同体)である。[熊野 聰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内のゲルマン的共同体の言及

【共同体】より

…ここでは共同体は生産のためではなく,外国や奴隷に対する政治組織であり,共同労働は戦争に現れる。〈ゲルマン的共同体〉においても,古典古代的共同体と同様に自由な小土地所有が行われるが,ゲルマン人は互いに離れて自給的農業経営を営むので,軍事的にも結集しない。ここでは共同体は個々の土地所有者たる農民家族の,所有と生命の相互保障,紛争処理などのための同盟である。…

※「ゲルマン的共同体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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