翻訳|coccidiosis
ウシ,ブタ,ニワトリやイヌ,ネコにみられるコクシジウムcoccidium(胞子虫綱に属する原虫の一群)による疾病。コクシジウムとしては,ウシではEimeria zurnii,E.bovis,E.ellipsoidalis,E.auburnensisが多く,ブタではEimeria属10種,Isospora属3種が知られる。イヌ,ネコではI.cauis,I.rivolt,I.bigemina,Hammondia hamondi,Toxoplasma gondiiが知られ,ニワトリコクシジウムは,Eimeria属の9種が知られている。コクシジウムは一般に宿主特異性があるが,トキソプラズマはネコ科動物が終宿主であり,他の動物は中間宿主にあたることが明らかにされた。
コクシジウムが幼弱な家畜に濃厚感染するとカタル性腸炎を起こし,その後数日間粘血便を排出する。この時期子ウシでは腹痛のためけいれんを起こす。下痢便は悪臭を放ち,肛門部は汚れが目だつ。このほか貧血,食欲不振,呼吸促迫,衰弱がみられ,極期には肛門筋が麻痺し,肛門が開いたまま脱肛しやすくなる。雛では腎コクシジウム症もあらわれ,濃厚感染すると貧血,食欲不振,腹水の貯留がみられ,腎臓の腫張が明りょうとなる。本症の診断は糞便(ふんべん)の検査により,オーシストoocyst(接合子囊)を検出するのが最も簡単で確実な方法である。濃厚感染した場合ウシではオーシストがまったくみられないことがあるが,この場合は粘液,粘血を採集して,メロゾイトmerozoiteがいるかどうかを確かめる。剖検では腹水が貯留し,粘膜は貧血のため退色している。腸間膜血管は拡張し,小腸~大腸の粘膜上皮の広範な剝離がみられる。腸粘膜内には米粒大の出血斑や壊死巣(えしそう)が散在する。この部位には多数のオーシストやその他の発育期のものが認められる。コクシジウムのオーシストは消毒剤や外界の環境の変化に強い抵抗性を示す。発症の予防には,アンプロリウムamproliumを飼料に混与し,治療にはサルファ剤とくにサルファジメトキシンを3~5日間連用する。内服または静脈内投与によって治療する。
執筆者:本好 茂一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…マラリア原虫Plasmodiumはハマダラカによって媒介され,人体の赤血球に入った種虫は複分裂増員を行って娘虫が赤血球外にでるとき高熱を発する。このほかにトキソプラズマ症を起こすトキソプラズマToxoplasma gondii,ニワトリのコクシジウム症のエイメリアEimeria,カイコの微粒子病のNosemaなど多くの種類がある。【今島 実】。…
※「コクシジウム症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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