日本大百科全書(ニッポニカ) 「コクシジウム」の意味・わかりやすい解説
コクシジウム
こくしじうむ
coccidium
原生動物のアピコンプレックス門胞子虫綱コクシジウム亜綱Coccidiaに属する単細胞動物の一群。旧分類における球虫亜綱(コクシジウム亜綱)に住血胞子虫亜綱をあわせたものに相当する。おもに脊椎(せきつい)動物に寄生するが、無脊椎動物に寄生するものもある。
コクシジウムの生活環は、通常シゾゴニー(メロゾイト形成)という無性生殖のほか、有性生殖の結果生じた接合子内で種虫(しゅちゅう)を形成するスポロゴニー(種虫形成)の時期もあって複雑である。中間宿主は、とるものととらないものがある。終宿主は哺乳(ほにゅう)類、鳥類の重要種を含む。
形態と大きさは、時期および種によってさまざまであるが、たとえばメロゾイト(娘虫(じょうちゅう))では、形態は楕円(だえん)形からうじ虫状で、大きさは2~20マイクロメートルと幅がある。
コクシジウムで重要なものは、運動性のないオーシスト(接合子嚢(のう))をつくり、終宿主の半数が脊椎動物であるアイメリア類と、オーキネート(虫様体)をつくり、終宿主が吸血性昆虫のカ、ヌカカ、ブユなどの住血胞子虫類である。主要属として、アイメリアEimeria、イソスポラIsospora、トキソプラスマToxoplasma、サルコキスティスSarcocystis、プラスモジウムPlasmodium、ロイコチトゾーンLeucocytozoonなどがある。
[小山 力]
コクシジウム症
ほとんどすべての時期の虫体が細胞内寄生をするので、宿主に与える影響は大きく、消化系諸器官の上皮細胞に寄生するものでは、組織破壊による下痢、血便、貧血などがおこる。また、その他に寄生するものでは、とくに中間宿主での病害が著しく中枢神経障害、肺炎症状、発熱、流・早・死産、全身衰弱などがおこる。さらに、赤血球や血管内皮系細胞などに寄生するものでは、出血、貧血、発熱、喀血(かっけつ)などのほか諸臓器の出血性病変が特徴的である。宿主にはヒトのほか家畜や家禽(かきん)の大部分が含まれるので、医学ならびに産業上きわめて重要な病気である。
[小山 力]