コクヌストモドキ(その他表記)Tribolium castaneum

改訂新版 世界大百科事典 「コクヌストモドキ」の意味・わかりやすい解説

コクヌストモドキ
Tribolium castaneum

甲虫目ゴミムシダマシ科に属し,穀粉類の大害虫。旧ソ連などの寒冷地を除いて世界に広く分布する。ヒラタコクヌストモドキT.confusumとともにflour beetleと呼ばれ,小麦粉ふすま,米ぬかなど主として穀粉類を食害するが,ビスケットやパンなどの加工食品が被害をうけることもある。日本では北海道を除く各地の製粉工場,飼料工場に多く見られる。成虫は体長3~4mmでやや平たく,赤褐色触角は先の3節が幅広い。雌は平均300卵ぐらいを穀粉に産みつけ,孵化(ふか)した幼虫は穀粉を食べ荒らす。通常は8~9回脱皮して穀粉中で蛹化(ようか)するが,環境によって脱皮回数は変わる。27℃で飼育すると卵から成虫までの期間は約50日と短い。幼虫は淡黄褐色で,からだの末端に1対の突起がある。胸脚を有し活発に歩行する。年に2~3世代を繰り返すが,成虫の寿命は約1年で長い。成虫は倉庫内では木材や麻袋の下で越冬する。飼育が容易なことから殺虫剤の効果をみる試虫として広く使われている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コクヌストモドキ」の意味・わかりやすい解説

コクヌストモドキ
こくぬすともどき / 擬穀盗人
[学] Tribolium castaneum

昆虫綱甲虫目ゴミムシダマシ科に属する昆虫。世界中に分布し、貯蔵穀類、とくに穀粉を食害する害虫。体長3~4ミリメートル。細長く平たい赤褐色の甲虫。光沢は鈍い。体側は平行し、上ばねの両側には細い隆起線がある。小麦粉に多く、幼虫は淡黄色で細長い円筒形、尾端に1対の突起がある。近縁のヒラタコクヌストモドキT. confusumとは、触角の先端3節が前の節より明らかに幅広いので区別できる。

[中根猛彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コクヌストモドキ」の意味・わかりやすい解説

コクヌストモドキ
Tribolium castaneum

鞘翅目ゴミムシダマシ科の昆虫。体長3~4mm。体は赤褐色で細長く,光沢は弱い。頭部は小さく,両側が眼の前方で広がり,眼の前半部を上下に分ける。触角は先端3節が強く広がる。前胸は上翅と同幅で,前方へ丸みを帯びてせばまる。上翅は長く,両側はほぼ平行し,翅表に細かい点刻列をもつ。貯蔵穀物の害虫として有名。本州四国,九州に産し,世界各地に広く分布する。

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