デジタル大辞泉 「コスモス」の意味・読み・例文・類語
コスモス
![](/image/dictionary/daijisen/gaiji/02539.gif)
1 《〈ギリシャ〉kosmos》秩序整然とした統一体としての、宇宙。または、世界。
2 秩序。調和。⇔カオス。
3 《〈ラテン〉cosmos》キク科の一年草。高さ1.5~2メートル。葉は細かく羽状に裂ける。秋、白色や紅色の花を開く。メキシコの原産で、観賞用。アキザクラ。オオハルシャギク。《季 秋》「―を離れし蝶に
![](/image/dictionary/daijisen/gaiji/02540.gif)
[補説]書名別項。→コスモス
整然たる秩序としての世界を表すギリシア語で,その反意語は,世界の生成以前の混沌を表すカオス。このコスモスという語は,今日では一般に,価値的な観点と融合した,あるいはまだそれから全面的には脱却していない近代以前の世界像を指すのに用いられる。この語は元来〈整頓〉〈装飾〉〈秩序〉を意味する言葉で,英語cosmeticが化粧品の意であることにうかがえるように,女性が服飾や化粧で装いを凝らした状態や,軍隊や社会の規律や秩序を表現するために使われたが,後に自然界の秩序立った様相を示すのに転用され,ついには〈世界の秩序〉あるいは秩序の貫徹した〈世界〉そのものを意味する語へと変貌を遂げていった。ラテン語でほぼ同じ意味の語mundusが〈世界〉を表すために用いられるようになったのも,最初はこのギリシア語の訳語としてであり,とくにキケロやルクレティウスの著作を通してこの用法がラテン世界に普及していったといわれる。
コスモスという語を上記の秩序ある世界の意味で用いた最古の文献として知られているのは,紀元前5世紀の前半に活躍したヘラクレイトスの断片である。だが文献としてはなんら伝えられていないが,古代の信頼しうる伝承によれば,その1世代前のピタゴラスの思想にすでにその先例があったといわれる。実際ピタゴラスの世界像はまさにコスモスとしての性格を十分に備えたものであった。というのは,数学的な原理を事物の本質とした彼は,立体図形の中で最も完全なものが球であるという審美的な理由によって,世界と地球とに球形性を付与しただけでなく,恒星天と7惑星がそれぞれ固有の回転運動によって地球のまわりを回りながら,その速度に対応する楽音を発し,これらの音が全体としてたえなるハーモニー(調和)を構成するとみなしたからである。観測天文学の新しい成果を取りこみながら,このピタゴラス的なコスモスの思想をさらに一歩推し進めたのがプラトンである。天界を神的な存在としたプラトンは,天界にふさわしい唯一の運動は一様な円運動であり,惑星の順行,逆行,留等のみかけの不規則性をこの一様円運動の原則から逸脱せずにいかに説明するかという問題を提起した。エウドクソスとカリッポスが考案した幾何学的な同心天球説はこの問題提起に対する一つのみごとな解答であった。その後アリストテレスは同心天球説に依拠しながら,階層構造的に秩序づけられたコスモスとしての宇宙論を完成させた。そしてアリストテレスの宇宙論は,古代末期にプトレマイオスの練りあげた離心円・周転円の天文学によって部分的に修正を受けながらも,その後2000年近くもの間,ローマ,アラビア,ヨーロッパへと受け継がれながら,つねに支配的な地位を確保することになる。これが解体を始める契機となったのは,16世紀中葉にコペルニクスの提唱した地動説であるが,世界像が価値的な観点から完全に脱却するには,デカルトの出現を待たねばならなかった。ケプラーはむろんのこと,ガリレイの世界像にもまだ伝統的なコスモスとしての世界の残滓がかなり残されていたのである。
→宇宙
執筆者:横山 雅彦
キク科の一年草。メキシコを主として熱帯アメリカに原産するコスモスは25種を超えるが,園芸種の基礎となったのは次の2種である。
(1)コスモス(和名アキザクラ,オオハルシャギク)C.bipinnatus Cav. 秋に群生して咲く様子がサクラの花に見えるので秋桜の名があるように,基本種は短日で花芽を分化するため,10月に開花する。コロンブスのアメリカ大陸発見後,ヨーロッパに入り,しだいに改良され庭園や切花に栽培されるようになった。草丈1~2m,茎は太く多数枝を分け,葉は対生で2回羽状複葉,裂片は線形。頭状花は総苞につつまれ,8枚ほどの紅,ピンク,白の幅広い舌状花をつけて秋に咲くが,園芸変種には八重咲き,丁字咲きなどがある。またアメリカで作出された早咲種はアーリー・センセーションEarly Sensationと名づけられ,播種(はしゆ)後60日で咲く。この色変りにピンクに暗紅色の目があるラデアンスRadianceが生まれ,さらにこの四倍体ベルサイユVersaillesが育成されて,周年コスモスが咲くようになった。
(2)黄花コスモスC.sulphureus Cav. メキシコからブラジルにかけて原産する一年草で,高さ1~2m,葉は2~3回羽状複葉で9~10月に黄色の8枚弁の頭状花をつける。改良された品種では高さ1m,花色は橙黄色,黄,淡黄色などの一重,八重咲きになり,8月咲きとなった。さらに美しい緋紅色のサンセットSunsetやディアボロDiaboloが作出されている。いずれも一年草で日当りと排水のよい場所に春まきとして育てる。早咲きコスモスは1~2月に温室にまけば3~4月に開花するので,鉢植えや切花に利用する。秋咲種は花壇や庭には遅くまいて草丈を低く咲かせるほうがよい。
執筆者:浅山 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キク科(APG分類:キク科)の春播(ま)き一年草。アキザクラ(秋桜)、オオハルシャギク(大春車菊)ともいう。メキシコ原産。草丈は2メートルほどになり、葉は対生し、細く裂けた羽状葉をつける。花は茎頂につき、桃、赤、白色などがあり、径6~8センチメートルで、一重のほか中心部の管状花が発達した丁字(ちょうじ)咲きや八重咲きがある。元来は短日植物で秋に開花する花であるが、最近は改良が進み、日長に関係なく播種(はしゅ)後70日ほどで開花する早咲き品種がつくられ、センセーション、ラジアンス、ベルサイユなどが代表品種である。
日当りと排水のよい所ならどこでも簡単につくれる。播種は5月上・中旬、気温が安定したころ、播床を均一にならし、30センチメートル間隔に3~5粒播きとし、軽く覆土する。また8月下旬から9月上旬ころに播種すると短日により草丈が短く育つ。この場合、やや厚播きにするとよい。発芽幼苗期にネキリムシの被害が出やすいので注意を要する。
コスモス属ではこのほかにキバナコスモスC. sulphureus Cav.がよく栽培される。春播き一年草で、コスモスに比べ草丈は短く、葉幅は広く、色は黄、橙(だいだい)、赤などで、半八重咲きである。草丈50センチメートルほどの極矮性(ごくわいせい)種もある。近年とくに日本で品種改良が進み、秋にこぼれ種で発芽、開花する年2回咲きの品種もつくられている。
[金子勝巳 2022年2月18日]
コスモス属は、アメリカのアリゾナから南米ボリビアに至る広い地域に約30種が分布するが、花卉(かき)としてのコスモスはメキシコに起源する。1789年、スペインから派遣された植物調査隊のビセンテ・セルバンテスは、マドリードのホセ・カバニエス神父に未知のキク科の種子を送った。神父はそれを栽培し、コスモスの名を与えた。日本には幕末に渡来したが、本格的に広がったのは1909年(明治42)、文部省が全国の小学校に栽培法を付して配布してからである。
[湯浅浩史 2022年2月18日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 19世紀の前半は,A.vonフンボルトとK.リッターによって代表される近代地理学の草創期である。フンボルトは,熱帯アメリカにおいて科学的な野外調査の模範を示し,自然現象の専門的観測調査の成果を総合して,生きた自然世界の全体像を把握しようと努め,ライフワーク《コスモス》を著した。本書とそのもとになった膨大な著作は,生態学的地理学,植物地理学のみならず,地球諸科学の発展にさまざまな面で貢献したのである。…
…ゲーテ,C.リッター,L.J.ゲイ・リュサック,G.キュビエらとも親交があった。ライフワークの《コスモス――自然学的世界記述の試み》5巻(1845‐62)は,総合的世界像を樹立した古典,自然研究の啓蒙書であり,その膨大な注記は科学史上の資料として再評価される必要がある。 彼の業績を記念して設立されたアレクサンダー・フォン・フンボルト財団は,地理学に限らず広い分野にわたって外国人研究者を招聘するドイツの代表的機関である。…
…以下にその成立史を概観してみよう。
〔宇宙観の変遷〕
欧米語で宇宙に相当する基本概念は,〈コスモス〉であるが,この語はギリシア語のkosmosに由来する。元来は〈秩序〉,もしくは〈秩序正しい状態〉を意味し,カオスchaos,すなわち〈混沌〉に対立する。…
…その一つの全体とは《ティマイオス》における宇宙である。その宇宙は渾沌一体というような原始風景を示すものではないが,人間をも含んだ秩序正しい区分のある一つの統一体,すなわちコスモスkosmosである。 さらにまたアリストテレスは,人間が石を見たり,知ったりするのは魂の中に石ころがあるためなのかとエンペドクレスを揶揄(やゆ)している。…
…以下にその成立史を概観してみよう。
〔宇宙観の変遷〕
欧米語で宇宙に相当する基本概念は,〈コスモス〉であるが,この語はギリシア語のkosmosに由来する。元来は〈秩序〉,もしくは〈秩序正しい状態〉を意味し,カオスchaos,すなわち〈混沌〉に対立する。…
…その一つの全体とは《ティマイオス》における宇宙である。その宇宙は渾沌一体というような原始風景を示すものではないが,人間をも含んだ秩序正しい区分のある一つの統一体,すなわちコスモスkosmosである。 さらにまたアリストテレスは,人間が石を見たり,知ったりするのは魂の中に石ころがあるためなのかとエンペドクレスを揶揄(やゆ)している。…
…このジャンセニストの教えは,人間の自然性を激しく糾弾しているものの,これほどまでに自然性を問題にせざるをえないところに,やはり近代的カトリックとしてのよじれがあるのである。
[コスモスの崩壊]
そこでこんどは科学革命がもたらした動的宇宙像であるが,これはコペルニクス,ブルーノ,ケプラー,ガリレイ,ニュートンなどといった人々によって担われた。この動的宇宙像は,かつての静的宇宙像としての〈コスモス〉の崩壊,つまり完結し秩序立ったものとしての宇宙の崩壊を意味する。…
…伝統文学の幽玄と明治の象徴主義を合わせた〈新幽玄〉〈新象徴〉を理念に,時代の復古的な機運に乗って,たちまち《アララギ》と歌壇を二分する新勢力をなした。白秋没後は門下によって運営されたが,52年に解散,木俣修の《形成》,宮柊二の《コスモス》などに分かれた。【河村 政敏】。…
※「コスモス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
《〈和〉doctor+yellow》新幹線の区間を走行しながら線路状態などを点検する車両。監視カメラやレーザー式センサーを備え、時速250キロ以上で走行することができる。名称は、車体が黄色(イエロー)...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新