エジプトの単性論派教会。エジプトのアレクサンドリアは使徒マルコの宣教した地と伝えられ,ローマ,アンティオキアとならぶ古代キリスト教世界の中心地であった。同市の主教は大きな権威を有し,神学のアレクサンドリア派はアンティオキア派とならび称された。アントニウスなどの努力によって修道制が確立したのもエジプトである。しかしアレクサンドリアは5世紀の単性論問題でローマおよびコンスタンティノープルの教会と争って敗北し,主教ディオスコロスはカルケドン公会議(451)で罷免された。エジプトの教会は孤立し,457年より独自のアレクサンドリア主教を立ててカルケドン派教会に対抗した。これがコプト教会のおこりである。ビザンティン帝国側からの単性論派融和策が成功しないうちに,エジプトは642年にアラブ軍に征服された。キリスト教徒の宗教活動は制限つきで許されたが,重税が課せられ,また時としてイスラム教徒支配者からの迫害にさらされた。そのためイスラム教への改宗があいつぎ,教会の勢力は衰えた。エジプト全体のアラブ化が進むなかで,総主教座は11世紀にアレクサンドリアからカイロに移された。コプト語は典礼用語として残るだけで,他はすべてアラビア語に置きかえられた。現在ではコプト教会の信者はエジプトの人口の約10%を占めるにすぎないが,アラブ世界では最大のキリスト教会である。
執筆者:森安 達也
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エジプトの正統キリスト教会。正式の呼称は「コプト・オーソドックス(正統)教会」。「コプト」coptは、「エジプト人」を意味するギリシア語「アイギプティオス」のアラビア語発音に由来。アレクサンドリアに主教座をもつエジプトの教会は、2世紀以降、キリスト教の教義(三位(さんみ)一体論とキリスト論)形成のうえに重要な役割を果たしたが、451年カルケドン公会議で採択されたキリスト論(カルケドン信条)を拒否し、教理的にはキリスト「単性論」(神とキリストとは単一の本性を有するとし、キリストの人性より神性を強調する説)を採用して、ビザンティン帝国教会と決別したといわれる。しかしこの背後には修道院を中心とするコプト教会のナショナリズムがあった。このことは、7世紀以来エジプトがアラブ化、イスラム化され、コプト人が少数派にとどまっている現在に至るまで貫かれている。
[荒井 献]
『荒井献著「コプト教会」(前嶋信次・杉勇・護雅夫編『オリエント史講座 第3巻』所収・1982・学生社)』▽『山形孝夫著『ワディ・ナトルンの修道院――コプト修道士の生活史から』(『イスラム世界の人びと 第5巻』所収・1984・東洋経済新報社)』▽『村山盛忠著『コプト社会に暮らす』(岩波新書)』
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…4世紀には修道院運動もアントニウスにより始められた。4世紀末テオドシウス帝によるキリスト教国教化はエジプトから古来の神々を根絶し,エジプト人の国民的自覚はコプト教会に受け継がれていった。【屋形 禎亮】
【イスラム時代】
ビザンティン帝国をヤルムークの戦(636)に破り,シリアを征服したアラブ・イスラム軍は,次いでアムル・ブン・アルアースの指揮の下にエジプトへ侵攻し,641年にはビザンティン帝国のバビロン城を陥れて,翌年ここにフスタートFusṭāṭの町を建設した。…
…ピョートル大帝は教会改革の一環として総主教制を廃止し(1721),かわりにシノド(宗務院)を設け,国家による統制を強化した。 東方諸教会とはカルケドン公会議の前後に分離した非カルケドン派教会の総称であるが,そのうちの多くがのちにイスラム教徒の支配圏に組み入れられたため,勢力が著しく減退し,こんにち,多少ともまとまった形で存在するのは,エジプトのコプト教会,エチオピア教会,アルメニア教会,レバノンのマロン派教会などにすぎず,キリスト教世界全体における影響力も限られている。 ネストリウス派教会はネストリウスが創設したものではない。…
…コプト教会に所属するエジプトのキリスト教徒。アラビア語でキブトQibṭ,クブトQubṭ。…
※「コプト教会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
小麦粉を練って作った生地を、幅3センチ程度に平たくのばし、切らずに長いままゆでた麺。形はきしめんに似る。中国陝西せんせい省の料理。多く、唐辛子などの香辛料が入ったたれと、熱した香味油をからめて食べる。...
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