若い莢(さや)や熟した豆を食用とし,茎葉を飼料や緑肥とするために栽培するマメ科の一年草。カウピーcowpeaともいう。原産地はアフリカで,古代にインドや東南アジアに伝わった。日本には中国から9世紀までには渡来していたらしい。また,ヨーロッパには紀元前3世紀に伝わった。ササゲには多くの品種がある。またヤッコササゲV.u.ssp.cylindrica (L.) Van Eseltine(=V.catjang (Burm.f.)Walp)やジュウロクササゲV.u.var.sesquipedalis (L.) Verde(=V.sesquipedalis (L.) Fruw.)などの品種群も分化しているが,それらもまとめてササゲとして扱われる。葉は3枚の小葉からなる複葉で,柄は長く,茎に互生する。茎はつる性の品種では2~4mの長さになり支柱に巻きつくが,矮性(わいせい)の品種では30~40cmで直立する。ヤッコササゲは矮性品種が多く,ジュウロクササゲはつる性品種が多い。夏に葉の付け根から柄が伸び,数個の蝶形花をつける。花弁は5枚で白または淡青色。莢は円筒形で12~20cm,若いうちは先端がやや上方に反り返り,物をささげ持つ形となり,これが名前の由来といわれる。ヤッコササゲの莢はやや短く,上向きにつく。ジュウロクササゲでは,莢は長く垂れ下がり,30~80cm,品種によっては1m以上にもなる。豆はアズキに似るがやや角ばるので大角豆とも呼ばれ,著しく扁平で角ばった大型の品種もある。豆の色は赤,白,茶,黒などのほか,斑紋のつく品種があり,多くはへその回りに黒っぽい輪状の紋様がある。寒さに弱いが,干ばつに強く,土壌や土地を選ばず,栽培が容易である。初夏に種をまき,夏から秋に若莢を,秋に熟豆を採る。アフリカやインドでは重要な作物群の一つで,多くの品種が分化している。日本では熟豆は煮豆やあん(餡)とし,若莢はてんぷらやあえ物,汁の実などとする。飼料には,青刈りや乾草,サイレージなどとして利用する。
執筆者:星川 清親
豆の成分は50%が炭水化物で,ほかにタンパク質,ビタミンB1などが含まれる。風味に乏しいが種皮が破れにくいので,慶事の赤飯にはアズキ代りに使われることも多い。ジュウロクササゲの若い莢は,筋をとってゆで,煮物,あえ物,揚物などにする。
執筆者:松本 仲子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
マメ科(APG分類:マメ科)の一年草。若い莢(さや)や熟した種子を食用とするほか、茎葉を家畜の飼料とし、緑肥ともする。品種によってつる性、半つる性、矮性(わいせい)などがあり、つる性品種は茎の長さが2~4メートルになるが、矮性種は30~40センチメートルである。葉は互生し、3小葉からなる複葉で、葉柄は長い。夏、葉の付け根から花柄を出し、白色または淡紫色の蝶形花(ちょうけいか)を数個つける。果実は豆果で、中に種子(豆)が一列に並んで入っている。種子はアズキに似るものから、大形扁平(へんぺい)で角張るものまで種々あり、色は赤、白、黒、褐色、斑(まだら)紋様などがある。日本では近縁種のヤッコササゲ(ハタササゲ)とジュウロクササゲも栽培され、ともに栽培上はササゲの仲間として扱われる。ヤッコササゲは矮性で、莢は長さ12~20センチメートル、物を捧(ささ)げる手のように上を向いてつく特徴が顕著である。ジュウロクササゲはつる性で、茎は2~3メートル、莢は長く垂れ下がり、1メートルを超す品種もある。
ササゲの仲間は全般に寒さには弱いが乾燥に強く、土地を選ばず、比較的容易に栽培できる。原産地はアフリカで、古代にインドや東南アジア各地に広まった。日本へは9世紀以前に中国から伝来したと思われる。
[星川清親 2019年10月18日]
乾燥した豆100グラム中には、23.9グラムのタンパク質、2グラムの脂質、55グラムの炭水化物が含まれ、熱量は336キロカロリーである。これらの栄養成分や無機質、ビタミン類などの含有量はアズキによく似ている。煮豆や餡(あん)、みそ原料とする。また煮くずれしないので、アズキのかわりに赤飯をつくるのに用いる。若莢は、ゆでて和(あ)え物にしたり、炒(いた)め物、汁の実、てんぷらなど野菜として利用する。
[星川清親 2019年10月18日]
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…古来,行商人は婦人が多く,古典にも販女(ひさぎめ),販婦(ひさぎめ)の名で記された。徳島県海部郡阿部村(現,由岐町)の婦人行商はイタダキ(頭上運搬にもとづく呼称)の名で知られ,カネリ(山口・島根両県),ササゲ,ボテフリ,カタギ,ザルなど,運搬法が行商人の呼称となっている点が注目される。行商の古態をさぐる指標となる事柄は,取引の時期と訪ねる相手方が,ほぼ固定しているか否かにある。…
…漁村では,夫が漁により得た魚介を,妻が近隣の農村や町へ売り歩くことが多かった。これらの行商婦人を,その運搬の姿から,イタダキ,ササゲ,カベリ,ショイカゴボテ,カツギッコ,オタタなどと呼ぶところが多かった。これらのなかには,地域をあげて,より広範な行商活動に従事するものもいくつかあった。…
…また種子だけでなく,若い未熟な豆のさやを野菜として利用したり,成熟したさやに含有される糖や有機酸を食用にするような利用法も発達した。エンドウやササゲ類のように栽培豆類として発達したものには,種子利用の品種と野菜的利用の品種との分化が著しい。このように多面的に利用されているのも,豆類の特徴とされよう。…
※「ささげ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...
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