翻訳|Sarawak
マレーシア東部,ボルネオ島北西部にある州。面積約12万km2,人口207万(2000)。州都はクチン。住民はイバン(海ダヤク)族(31%),華人(30%)が主体で,マレー人は18%程度,インド人はマレー半島諸州に比べきわめて少ない。地形はラジャン川の沖積平野を除き全般に丘陵と山地が多く,大河川の低湿地はマングローブ林や湿地性森林,山地は厚い雨林に覆われている。クチンと主要都市シブ,ミリを結ぶ道路建設が進められているが,なお陸上交通は不便であり,各都市間の一般的な交通手段は小型船と航空機である。陸続きのインドネシア(カリマンタン)との交易はほとんどなく,クチンよりポンティアナへ週1便の小型機が飛ぶほかは,旅客・物資を直接運ぶ路線はない。海岸線が単調なため港湾はすべて河川に設けられ,そこを基点に川沿いに集落が内陸へと延びていった。州内最大の産業の林業も河川を交通路として奥地を開発しつつ発展した。下流や河口の製材所で加工された原木はおもに日本へ輸出される。木材に次いで重要な輸出品は,海底油田の開発で再び活気を取り戻したミリの石油と天然ガスである。その生産は今日もシェル石油が掌握している。このほか州政府が外貨獲得のために力を注ぐものにアブラヤシ,コショウ,カカオがあり,いぜん第1次産品に経済を依存するが,クチンに加工貿易地区を設定し,小規模ながら近代工業の育成も進められている。かつて白人の王侯イギリス人ブルックJames Brooke(1803-68)に支配されたこともあるサラワクは,1963年マレーシア連邦結成に参加して以来,ようやく豊かな資源を活用できる段階にはいった。
執筆者:太田 勇
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マレーシア東部、ボルネオ島北岸にある州。1841年、海賊鎮定の功績によりイギリス人ジェームズ・ブルークがブルネイのスルタンから与えられた。彼は自ら王国を建設したが、19世紀末イギリスの保護国となり、1963年マレーシアに編入された。面積12万4449平方キロメートル、人口201万2616(2000)。州都はクチン。
地形は、湿地帯をなす広大な海岸低地が延び、そこをラジャン川、ルパル川など多くの河川が蛇行する。背後はしだいに高まってインドネシア領との国境をなす山地に移行する。気候は高温多湿で年降水量は3900ミリメートルに及び、州の70~80%は密林に覆われる。住民はプロト・マレー系のダヤク人(居住地により海ダヤク、陸ダヤクの別がある)が最大で、ついで中国系、第二次マレー人などである。イスラム教徒が最大数を占めるが、仏教徒、キリスト教徒も多い。マレー語と英語がともに公用語とされており、マレーシア国会の下院には24人、上院には5人の代表を送る。経済的に州の財政を支える二大要素は、石油利権税と木材輸出である。油田は北東部のミリにサラワク・シェル会社がある。また海底油田の開発が進み、石油は木材とともに輸出品の首位を占めるようになった。ほかにゴム、やし油、コショウも産し、また金やアンチモンなどの鉱産物もある。プロト・マレー系の諸族はなお焼畑農業などで生活するものも多い。政府は農業大学などを設立して生活の向上、指導に努めている。定期航空もよく発達している。
[別技篤彦]
ボルネオ北西部に位置するマレーシアの州。19世紀中頃まではブルネイ王国の支配下にあったが,1841年イギリス人ジェームズ・ブルックがこの地にサラワク王国を建設した。サラワク王国は,88年にイギリスの保護国になり,また1946年以降はその直轄植民地とされたのち,63年マレーシア領として独立した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…のち会社を辞し,父の遺産で購入したローヤリスト号で1838年にシンガポールに向かった。ここで海峡植民地知事より,ボルネオのブルネイ王国の支配下にあるサラワクのクチンに赴き,難破したイギリス船の生存者を引き取ることを求められ,クチンを訪れた。40年に再びクチンを訪れ,同地の支配者を助けて反乱を鎮圧し,40年支配者に迫ってみずからサラワクの領主となった。…
…サバ州は山がちで北西部に最高峰キナバル山(4101m)がそびえ,東海岸は水深の大きい湾入が多い。サラワク州は大部分の土地が標高300m以下,国内最大の河川ラジャン川流域には広大な低湿地が広がる。陸路の開発が遅れているサラワク州では,河川はとくに重要な交通路であり,内陸の主要集落はすべて河川沿いに成立している。…
※「サラワク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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