サワギク(読み)さわぎく

改訂新版 世界大百科事典 「サワギク」の意味・わかりやすい解説

サワギク (沢菊)
Senecio nikoensis Miq.

日本全土に分布する固有種で,山地の沢沿いの林床に生えるキク科多年草ボロギクともいう。根出葉は花時にはないが,茎の下部とともに白毛によって覆われる。茎は直立し,高さ40~120cm,深裂した薄い茎葉を互生する。花は6~8月,枝の先にやや散状に多数つく頭花である。頭花は黄色で,筒状花と舌状花からなり,径12mm。総苞は1列,花柄は細く,苞を欠く。瘦果(そうか)は長さ1.5mm,細毛を生じる。冠毛は雪白色で目だつ。別名のボロギクは,この冠毛がぼろくずのように見えるところからつけられた。

 サワオグルマS.pierotii Miq.は本州から琉球にかけて分布する日本固有の多年草。花時にも根出葉があり,日当りのよい山間部の湿地草原に生える。頭花は黄色で,筒状花と舌状花からなり,4~6月,枝の先にやや散状に多数つく。開花直径は3.5~5cmで美しい。

 ハンゴンソウS.cannabifolius Less.は東アジアの北部に分布し,本州以北の山地の湿地草原や林縁に生える多年草。茎は直立し,高さ1~2m。茎葉は1~2対羽状に深裂ないし全裂し,互生する。7~8月,茎上部に大型の散房状花序をつけ,多数の黄色い頭花を開く。

 キオン属Senecio(英名groundsel,ragwort)は1500種以上を含む大きな属である。日本には十数種の自生植物ほかに,ヨーロッパ原産の帰化植物ノボロギクS.vulgaris L.がある。これは明治初めに渡来した,道ばたや耕地に生える一年生の雑草。サワギクと同じように冠毛は雪白色で目につきやすい。和名は山のボロギク(サワギク)に対して,野のボロギクの意。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サワギク」の意味・わかりやすい解説

サワギク
さわぎく / 沢菊
[学] Nemosenecio nikoensis (Miq.) B.Nord.
Senecio nikoensis Miq.

キク科(APG分類:キク科)の多年草。茎は直立し、高さ35~110センチメートルで、全体に柔らかい。根出葉は白毛を密生し、オトコエシの葉に似る。茎葉はごく薄く、両面に軟毛を散生する。6~8月、茎頂に散房状に多数の頭花をつける。頭花は舌状花と管状花からなり、黄色。痩果(そうか)は長さ1.5ミリメートル、先端に雪白色の剛毛状冠毛を多数つける。花期後、この冠毛が毛玉のようになることから、ボロギクともよばれる。山地の沢沿いの林床に生え、北海道から九州に分布する。近似のノボロギクSenecio vulgaris L.も冠毛が同様に毛玉状となるが、これはヨーロッパ原産の帰化植物で、サワギクとは系統が異なる。

小山博滋 2022年2月18日]

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百科事典マイペディア 「サワギク」の意味・わかりやすい解説

サワギク

ノボロギク

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