改訂新版 世界大百科事典 「サン語」の意味・わかりやすい解説
サン語 (サンご)
San
コイ・コインとともにかつては南部アフリカに広く分布していたが,現在では地勢的条件の悪いボツワナのカラハリ砂漠,ナミビア,アンゴラ南部に住み採集狩猟生活をしているサンの言語。コイサン語族に属する。語し手の数は5万人内外といわれる。4~5種のクリックclick(舌打音,吸着音)をもつという特徴のほかに,統語法のちがい,性(男性,女性,中性)と数(単数,双数,複数)をともに示す後辞詞,二人称代名詞の双数型(あなた方二人)の存在などによりバントゥー諸語とは明らかに異なる言語である。北部(!kũː 語,Kxauei語等。なお,以下のものも含め!,,/,≠はクリック音を示す。カタカナ表記は不能なのでローマ字とあわせての音声表記とした。クリック音については詳しくは〈コイサン語族〉の項目を参照),中部(Naron語,/guikwe語,Heiware語等),南部(!xoː 語,≠khomani語,/auo語等)の3グループに大別され,各グループ内の言語どうしは相互理解できるが,グループを超えては相互理解できないといわれている。
執筆者:加賀谷 良平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報