改訂新版 世界大百科事典 「シコクビエ」の意味・わかりやすい解説
シコクビエ
finger millet
Eleusine coracana (L.) Gaertn.
イネ科の一年生穀物。原産地はアフリカ。草丈1~1.5m,杆(かん)は扁平で角稜があり,伸長した節間に1~4個の伸長しない節間がはさまることが多いので,外観上1節から2~4葉が生じているように見える。穂は3~10本の枝梗が輪生し,鳥の趾(あし),あるいは手のひらの指形になる。各枝梗は5~10cm,2列に小穂がつく。穎果(えいか)は球形で,長さ1.5mm,幅1.4mm,成熟すれば脱粒しやすい。日本で雑草としてふつうに見られるオヒシバは近縁種で,本種の成立に関与しているとする説もあるが,染色体数は異なる。アフリカに野生するE.africana Ken.-O'Byrneは,シコクビエと同じく染色体数2n=36なので,祖先となった野生種はこのE.africanaと考えられている。日本では近年まで全国的に山間部の畑地で少量ずつ栽培されていたが,最近はほとんどみられない。元来は乾燥した気候帯域に広がったサバンナ農耕文化の指標作物であり,インド亜大陸およびアフリカでは現在でも重要な穀物である。栽培はヒエに準じる。精白して粥,粉にしてだんごまたは一種のパンとする。またモヤシを麦芽のように使い,酒を醸したり,青刈飼料にもする。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報