シナノキンバイ(その他表記)Trollius riederianus Fisch.et Mey.var.japonicus (Miq.) Ohwi

改訂新版 世界大百科事典 「シナノキンバイ」の意味・わかりやすい解説

シナノキンバイ
Trollius riederianus Fisch.et Mey.var.japonicus (Miq.) Ohwi

やや湿った高山草原に普通にみられるキンポウゲ科多年草。全体に無毛で,高さ20~80cm。茎は上部で分枝するか,分枝せず少数の茎葉をつける。根生葉や下部の茎葉は長い柄があり,葉身は5片に深く分裂し,裂片は欠刻し,先がとがる。葉質はやや厚く洋紙質で光沢があり,裏面淡緑色。上部の茎葉は短い柄があるか,または無柄,小さく,分裂も簡単になる。7~9月に,枝の先に直径3~4cmの花を上向きにつける。萼片は5~7枚,橙黄色花弁は小型,線形おしべよりも短く,濃い橙色,蜜腺がある。おしべは多数。めしべは6~13本,それぞれ成熟して袋果となり,先に宿存した花柱がある。種子は多数,光沢がある。北海道本州高山帯に分布する。チシマノキンバイソウキタキンバイソウ)var.riederianusは北海道よりカムチャツカにかけて分布し,シナノキンバイに比べて袋果の数が多く,宿存する花柱が短い。キンバイソウT.hondoensis Nakaiは本州中部の主として亜寒帯に産し,花弁はおしべより長い。山草として栽培されることがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シナノキンバイ」の意味・わかりやすい解説

シナノキンバイ
しなのきんばい / 信濃金梅
[学] Trollius riederianus Fisch. et Mey. var. japonicus (Miq.) Ohwi

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の多年草。茎は高さ20~60センチメートル。葉は3全裂し、裂片には鋭い鋸歯(きょし)がある。7~8月、茎の先に鮮黄色で径約4センチメートルの花を1個ずつ開く。小さな花弁と花弁状の萼片(がくへん)があり、花弁は雄しべより短い。果実は袋果(たいか)で6~13個ある。代表的な高山植物の一つで、高山帯の湿った草原に生え、中部地方以北の本州、北海道、および朝鮮半島に分布する。同属のキンバイソウに似ており、長野県に多いのでこの名がある。北海道、千島、カムチャツカ、オホーツクには、雌しべや萼片の数が多い基本種チシマノキンバイソウが分布する。

[門田裕一 2020年3月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シナノキンバイ」の意味・わかりやすい解説

シナノキンバイ(信濃金梅)
シナノキンバイ
Trollius riederianus var. japonicus; globe-flower

キンポウゲ科の多年草。北海道や本州中部以北の高山の水湿地や湿りけの多い草原に生え,しばしば大群落をつくる。湿生お花畑の代表的な構成種である。高さ 30~60cmあり,根生葉,茎葉ともに長い柄があって,掌状に深く裂け,各裂片は細い。夏に,茎の頂部に径3~4cmの鮮かな黄花をつける。花弁状の萼片が5~7枚あって,中央に黄色のおしべ多数と短い線形の花弁があり,めしべも多数ある。近縁種のキンバイソウ T. hondoensisは本州中部に特産しシナノキンバイに似ているが,おしべよりも長い黄色の線形の花弁が多数あって,本種よりもずっとはなやかである。

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百科事典マイペディア 「シナノキンバイ」の意味・わかりやすい解説

シナノキンバイ

北海道,本州中北部の高山の草原にはえるキンポウゲ科の多年草。茎は高さ20〜50cm,掌状に深く裂ける少数の葉をつける。7〜8月,茎の先に黄色で径3〜4cmの花を開く。5〜7枚の花弁状のものは萼片で,花弁は退化し非常に小さい。山地にはえるキンバイソウよりも葉が細かく切れこみ,退化花弁も短い。

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