ジェー・シー・オー臨界事故(読み)ジェー・シー・オーりんかいじこ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ジェー・シー・オー臨界事故
ジェー・シー・オーりんかいじこ

1999年9月30日,茨城県東海村の民間ウラン転換加工会社ジェー・シー・オー JCO東海事業所の転換試験棟で起こった日本初の臨界事故(→臨界)。作業員 3人が大量の放射線を浴び,うち 2人が死亡した。地元住民には,半径 350m圏内の避難および半径 10km圏内の屋内退避措置がとられ,約 31万人に影響した。JCOは,六フッ化ウランを二酸化ウラン粉末に転換して沸騰水型軽水炉用のウラン燃料を製造していたが,事故当時は高速増殖炉実験炉「常陽」に使う燃料を精製するため通常より高い濃縮度の硝酸ウラニル溶液を沈殿槽に注入する作業を行なっていた。正規のマニュアルとは異なる,バケツ状のステンレス容器を用いた危険な工程で作業を実施したため,沈殿槽内のウラン濃度が高まり臨界量に達し,核分裂連鎖反応を起こした。作業していた 3人は骨髄,消化器,皮膚などほぼ全身に急性放射線障害を起こした。そのほかの JCOの従業員に最大 48mSv(ミリシーベルト。→シーベルト),防災業務関係者に最大 9.4mSv,周辺住民に最大 16mSvの被曝があった。この事故で,原子力発電所以外の原子力事業でも重大な事故が起こりうることがわかり,国は各事業を総点検,原子炉等規制法改正などで原子力の安全規制を強化した。科学技術庁はこの事故を,国際原子力事象評価尺度 INESでレベル4と位置づけた。(→原子力発電所事故

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