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臨界 りんかいcriticality; critical state

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

臨界
りんかい
criticality; critical state

核分裂連鎖反応において,1回の核分裂の結果放出された中性子がちょうど平均1回の核分裂を引き起こして,毎秒起こる核分裂の回数が時間とともに変わらない状態をいう。核分裂で放出された中性子の数が次の核分裂を起こしたのちに何倍になっているかという比を中性子増倍係数 ( k で表す) というが,これが1のときが臨界である (→四因子公式 ) 。核分裂の回数は,増倍係数が1をこえる状態 (超臨界) では時間とともに増加し,1未満の状態 (臨界未満) では時間とともに減少する。臨界を達成するためにはある一定量の核分裂物質が必要であり,この量のことを臨界質量,あるいは単に臨界量という。原子炉では核燃料の量と密度,減速材や反射体の量と配置などを適切に設定して,臨界が安定に維持できるように設計されている。また起動,出力変更,停止などの運転操作を行なう際に,適当な超臨界,臨界未満状態も実現できるように,制御棒が備えられている。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

臨界

核分裂の連鎖反応が安定した状態で続くこと。原子炉にとって特別重要な段階で、実質的に動き出したといえる。プルトニウムなど核物質の原子核に中性子がぶつかると核分裂が起きる。核分裂の際に発生する熱で電気を起こすのが原子力発電だ。もんじゅの場合、核分裂で一つの原子核から中性子が新たに平均3個飛び出す。この中性子がさらに別の原子核にぶつかって核分裂を起こし……と続く。中性子を吸収する制御棒を徐々に引き抜いてその数が一定になるように調整し、核分裂の連鎖反応が安定的に保たれた状態が「臨界」。コピー機に例えれば、スイッチを入れることが制御棒を引き抜く作業にあたり、機械が温まってコピーできる状態になったのが「臨界」だ。

(2010-05-08 朝日新聞 夕刊 1社会)

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世界大百科事典 第2版の解説

りんかい【臨界 critical state】

核分裂性物質を含む物質の集合体において,単位時間に核分裂で発生する中性子の数と吸収や漏れで失われる中性子の数が等しい状態をいう。核融合装置では,核融合反応を維持するために入力されるエネルギーと反応の結果発生するエネルギーが等しいとき,臨界状態にあるということがある。臨界にできる核分裂性物質の集合体は原子炉と呼ばれ,その設置には国の許可が必要である。関連する概念に未臨界,超臨界がある。すなわち,単位時間に発生する中性子の数よりも失われる中性子の数の方が多い状態を未臨界,発生する中性子の数の方が多い状態を超臨界(あるいは臨界超過)であるという。

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大辞林 第三版の解説

りんかい【臨界】

さかい。境界。特に原子炉で、核分裂が持続的に進行しはじめる境目。 「 -に達する」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

臨界
りんかい
critical state

一般に境、境界を意味し、物理学では物質の物理的性質が異なる境界をさす用語として用いられる。とくに原子炉や核燃料について、核分裂反応が時間とともに増大し始める境目の状態、中性子の生成と消滅が均衡している状態を臨界あるいは臨界状態という。
 ウランやプルトニウムは、中性子の照射により、核分裂するとともに2~3個の中性子を放出する。放出された中性子が次の核分裂を引き起こすと、連鎖反応と同時に急速に核分裂反応が倍増していく(図A)。中性子の数を制御しながら核分裂反応が増加しないように連鎖反応を継続させ、臨界状態を実現することを、臨界に達したという(図B)。臨界状態になっていない状態を未臨界または臨界未満といい、時間とともに連鎖反応が増加することを超臨界または臨界超過という。また、臨界に達したのち、原子炉の運転を停止し、核分裂が停止した未臨界状態となり、その後、ふたたび臨界状態になることを再臨界とよんでいる。[加藤幾芳]

臨界事故と臨界安全

原子炉では、カドミウムやホウ素などの、中性子を吸収しやすい物質を用いて中性子の数を制御する。臨界状態は、これらの物質でできた制御棒を原子炉から出し入れして実現する。臨界事故(制御されない連鎖反応が起こることや意図しない臨界状態が実現すること)に至らないように、ウランやプルトニウムなどの核燃料物質を取り扱う施設や作業手順などについて管理することを臨界管理といい、その研究分野を臨界安全とよんでいる。
 核分裂物質を一定量集めると、核分裂反応が連鎖的に起こる。連鎖反応の起こる最少量を臨界質量あるいは単に臨界量といい、核分裂物質の種類、形状、密度、周囲の物質の種類や状態などによって異なる。核燃料や核分裂物質が臨界量になることがないように、臨界管理は厳重に行わなければならず、臨界安全では、たとえ臨界事故が発生しても重大な状態にならないように、さまざまな対応処置を検討するとともに、臨界量を決めるデータの収集・分析が行われている。
 1999年(平成11)、茨城県東海村JCO核燃料加工施設で発生し、作業員2名が死亡した臨界事故は、作業の効率化を意図して正規の工程から外れ、背丈が低く内径の広い沈殿槽に臨界量以上の硝酸ウラニル溶液を注入したために生じたものである。沈殿槽を包む冷却ジャケット内の水が中性子の反射材となって核分裂反応が促進され、臨界状態は約20時間継続した。臨界状態を脱することができたのは、冷却ジャケットの水を抜いて反射機能を除去し、中性子が容器の外に漏れるようにしたことによる。このように、臨界量が核分裂物質の形状や周囲の状態に依存することを理解することは重要である。
 臨界状態を保ちながら運転する現在の原子炉は、つねに中性子の生成と消滅のバランスを保ちながら運転するため、臨界事故の危険性を抱えている。もし、未臨界の状態で運転し、不足する中性子を外から絶えず供給して運転できれば、臨界事故が起こらない原子炉が可能である。このような原子炉は未臨界加速器駆動原子炉とよばれ、次世代原子炉の一つとして研究されている。[加藤幾芳]

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世界大百科事典内の臨界の言及

【臨界状態】より

…一定量の気体を温度一定に保って圧縮すると,気体の体積は小さくなり,圧力が増す。圧縮を続けると,ある圧力のところで液化が始まる。しかし,ある温度より上では,どんなに圧縮しても気体は液化しない。圧力を加えることによって液化が起こる限界の温度を臨界温度critical temperature,臨界温度で液化の起こり始める圧力を臨界圧力critical pressureという。臨界温度,臨界圧力は,各気体に特有なものであり,気体の量にはよらない。…

【原子炉】より

…そして,ちょうどkeff=1のときにのみ中性子数,したがって単位時間当りの核分裂数は世代を経ても変化しない。この状態を臨界という。また,keff>1のときを臨界超過または超臨界,keff<1のときを未臨界または臨界未満という。…

※「臨界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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