イギリスの詩人R.キップリングの物語集。1894年出版。七つの短編からなるが,第4話のベーリング海のアザラシの話を除いては,すべてジャングルにすむ動物の習性を,動物の側に立って描いたものである。その主要な物語は,虎のシア・カンに追われる人間の子モーグリが父狼に助けられて子狼とともに育てられ,ジャングルの掟を知るようになる(第1話)。その後狼族から逃げ出し,猿族にさらわれるが,熊のバルーや豹のバギーラに助けられ(第2話),この後人間の世界に戻り,その醜悪さを体験しながら狼族の協力によってついにシア・カンを退治する(第3話)。躍動的な文章で語られた動物と人間が,同じ思考,掟のなかに生きるこの特異な世界は,当時の都会化したイギリス人の好評を博したのみでなく,日本でもJ.ロンドンの《荒野の叫び声》とともに少年向き動物物語として広く愛読されている。なお,《続ジャングル・ブック》(1895)も出版された。
執筆者:鈴木 建三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イギリスの作家キップリングの児童文学作品。1894年発表。『狼(おおかみ)少年』とも訳される。95年刊の『セカンド・ジャングル・ブック』とあわせて15編の動物物語中8編が、オオカミに育てられた少年モーグリを主人公にしている。モーグリを中心に、トラと戦い、赤イヌを迎え撃ち、人間の貪欲(どんよく)をこらしめるオオカミの群れを描いた8編は、動物の特性を生かしながらも大胆なほどの擬人化を行うことにより、自尊心、勇気、沈着、生の歓喜など、男性的特質を謳歌(おうか)して、動物文学に新分野を開いた。ほかの7編は、それぞれ独立した好短編だが、物語性、詩情などの点で『白いアザラシ』『リキ・ティキ・タービ』『象のツーマイ』などが多くの人々に愛読されている。
[神宮輝夫]
『中野好夫訳『ジャングル・ブック』上下(岩波少年文庫)』▽『木島始訳『ジャングル・ブック』(1979・福音館書店)』
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…88年,愉快な3人の兵卒が活躍する《三兵士》,在印イギリス軍人や文官の生活,土地の怪談,迷信,アヘン窟などに題材をとった《高原平話》の2冊の短編集を出し,これらが彼の出世作となった。92年アメリカ婦人と結婚し,一時アメリカに移り住んだが,その間,インド在住軍人の生活を歌い上げ一世を風靡した詩集《兵営の歌》(1892),狼に育てられた少年マウグリの物語で日本でも有名な《ジャングル・ブック》(1894),《続ジャングル・ブック》(1895)を出版しますます文名を高めた。96年に帰国,詩集《七つの海》を出版,99年のボーア戦争では強硬論を唱えた。…
※「ジャングルブック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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