翻訳|Spacelab
スペースシャトルの荷物室の中に搭載される宇宙実験室。Spacelabはspace laboratoryを略して作られた愛称。スペースシャトルとともにアメリカの宇宙輸送システムspace transportation system(STS)を構成する要素の一つであって,スカイラブのように特定の宇宙ミッションではなく,いろいろの用途に用いることができる。元来,アメリカで計画されていたものだが,資金的に無理があったためヨーロッパ諸国に協力を求め,実際に開発を担当したのはESA(欧州宇宙局)である。
スペースラブは実験室として実験設備や観測装置を収容し,ここで科学者が研究することをおもな機能としており,宇宙船としての主要な機能である地上との通信,生命維持,電力と熱制御などの装置はほとんどすべてスペースシャトルに依存している。この点が独立した宇宙ステーションや有人宇宙実験室とは異なっている。スペースラブは大別すると二つの構成部分に分けられる。その一つは与圧モデュールといわれる有人実験室で,この中には宇宙での実験装置が積み込まれ,人が乗り込んで研究を行うことができる。モデュールは直径約4.2mで,長さが約4.3mの短モデュールと約7mの長モデュールがある。これらのモデュールの内部には計測器などを搭載できるラックが設けられており,光学観測用の窓や実験装置を内から外に出すためのエアロックも備えている。もう一つの構成部分はパレットと呼ばれる架台であって,ここには必ずしも人間が直接手を触れる必要のないもの,むしろ宇宙環境で使う装置などを備えつける。パレットは幅約4.4m,長さ2.9mのU字形をしており,これに備えつけた装置に対しては環境・熱制御や電力の供給およびデータ処理などの機能を与えることができるようになっている。これらの構成品は使用目的に合わせていろいろの組合せができるようになっている。例えば宇宙医学の実験のように,人間が主役をなすものでは人間の住める空間の広い長モデュールを用い,また地球観測のようなミッションではモデュールは必ずしも必要なく,観測機器をいくつかのパレットの上に配置する。スペースラブはスペースシャトルに合わせて飛行するので1~2週間くらいの飛行時間であり,地上に帰還後,再整備して次の飛行に備えることができるのが特徴であるが,長期間宇宙で研究するのには必ずしも適していない。これらは宇宙ステーションとの違いといえよう。
執筆者:長友 信人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 1975年にはアメリカのアポロ宇宙船とソ連のソユーズ宇宙船によるアポロ・ソユーズ共同飛行が行われたが,この時点を境として,アメリカはそれまでの使い捨てのロケットから再使用可能なスペースシャトルの利用への転換を目ざし,打上げロケットを全面的にこれにおきかえるとともに,宇宙空間における活動もスペースシャトルを積極的に利用するという方向づけを行った。すなわち,スペースシャトルはこれまでのロケットのように人工衛星を直接打ち上げるだけでなく,宇宙ステーション建設のための資材の運搬,宇宙ステーションと地球との連絡,宇宙環境における科学実験などを行うスペースラブの搭載およびこれとの組合せによる運用など幅広い利用を目ざしたものである。スペースラブでは,その乗員は特別に訓練を受けなくてもよく,また搭載機器もなるべく地上の規格品をのせることができるようにするなど,これまでより幅広い分野の人々に宇宙をより身近にするということを前提として構想されたものである。…
※「スペースラブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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