モデュール(英語表記)module

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改訂新版 世界大百科事典 「モデュール」の意味・わかりやすい解説

モデュール
module

モジュールともいう。測定単位あるいは機能単位を示す用語として多くの技術分野で用いられている。古い用語としてギリシアローマの石造建築比例を定めるために用いられた〈モドゥルス〉があり,ローマ時代にウィトルウィウスによって著された《建築十書》には,円柱基部の直径を1モドゥルス,すなわち寸法の基本単位として,柱の高さや柱間など神殿各部の寸法を導く方法が詳述されている。現代の建築モデュールもやはり寸法の単位であるが,比例のためというよりもむしろ量産構成材のための寸法規格という意味合いが強い。電気では回路系などを1組として装置システムの構成単位としたものをモデュールといい,歯車の場合はピッチ円の直径を歯数で除したものをモデュールといって歯車の大きさを決めるために用いる。またアポロ計画の月着陸船などのようにカプセル状にまとめられた1組の装置のことをモデュールと呼ぶことがある。
木割 →建築モデュール
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知恵蔵 「モデュール」の解説

モデュール

建築を設計する際に用いられる基準寸法。時代や地域によって異なり、その意味では日本の伝統建築で長らく用いられてきた一間(いつけん)や三尺もモデュールの一種だが、最も一般的には、柱の底面半径を建物全体の基準に見立てた西洋の古代建築における基準寸法のことを指す。ル・コルビュジエは、この古くからあったモデュールを、黄金分割発想を取り入れたモデュロール(Modulor:orは金を意味するフランス語)として再構成し、成人男子の理想身長を182.9cmに見立てるなど、具体的な数値と図解によって機能主義建築の必要性を力説、「住むための機械」としての住宅設計に大いに活用した。その強い影響を、日本人の体格に合わせた日本型モデュロールを提唱し、新東京都庁舎の設計に当たってそれを基準寸法として採用した丹下健三にもうかがうことができる。

(暮沢剛巳 建築評論家 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モデュール」の意味・わかりやすい解説

モデュール
module

建築用語。建築の各部分を一定の寸法の体系で整える場合の基準寸法。古代ヨーロッパにおいて,人間の肢体の部分の長さをもとに定めた,計測の基準単位をモデュルスと呼んだことに由来する。古来ギリシア建築,ローマ建築,さらにはルネサンス建築などにおいて用いられたオーダーや,日本の木割など,なんらかの形でモデュールは存在してきたが,第1次世界大戦中,アメリカの A.ベミスが主張し,今日ではそれぞれの建築家によってさまざまなものに用いられている。特にル・コルビュジエが黄金比をもとに定めたモデュロールの体系は有名である。

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百科事典マイペディア 「モデュール」の意味・わかりやすい解説

モデュール

モジュールとも。測定単位あるいは機能単位を示す用語。建築では建築物の寸法関係を定めるとき基準とする単位寸法をいう。人体・動作・家具などの寸法にも合い,比例関係も調和することが必要。煉瓦や畳の寸法はその例。日本ではジス(JIS)で制定されており,建築材料の工場生産,プレハブ化に重要。
→関連項目モデュロール

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リフォーム用語集 「モデュール」の解説

モデュール

建築生産面での基準寸法または基準寸法の組み合わせによる寸法体系。柱の芯々寸法を3尺(91cm)とする「3尺モジュール」、廊下や階段巾などにゆとりをもたせた、芯々1mを基準寸法とする「メーターモジュール」などがある。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「モデュール」の解説

モデュール【module】

モジュール。⇒モジュール

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世界大百科事典(旧版)内のモデュールの言及

【オーダー】より

…建築教程の中心としてのオーダーは,19世紀半ばのゴシック・リバイバルから20世紀の近代建築運動に至る間に否定されたが,建築全体の比例調和の意味でのオーダーは生き残り,近代主義の美学の中心となっていた。特にル・コルビュジエが人体寸法に基づく寸法体系モデュロールを唱えたり,建築の工業化・標準化を進める規格寸法の体系が一般にモデュールの名で呼ばれているのは,そのあらわれと見ることができる。比例[建築]【福田 晴虔】。…

【建築モデュール】より

…建築を構成する部材ないしは建築空間の大きさを決める際に基本となる寸法の単位,またはそのような寸法の集合。建築モデュールによって建築および構成部材の寸法を調整することをモデュラーコオーディネーションmodular coordination(またはモデュール割り)という。 古くは建築各部の寸法の比例関係を定める機能を果たしたとするのが一般的な解釈であるが,むしろこの言葉が広く用いられるようになったのは,建築の工業化が現実に進展し始めた第1次世界大戦以降,とくに第2次世界大戦以後のことである。…

【歯車】より

…図3にインボリュート平歯車の例を示し,この図の中で歯車に関する基本的な用語を説明しておいた。なお,ピッチ円の直径(単位m)を歯数で除したものをモジュール(モデュールともいう。記号m)というが,これは歯の大きさを表す一つの尺度でもあり,この値が大きいほど歯も大きい。…

【比例】より

…円柱はそのまま人体になぞらえられ,たとえばドリス式円柱は男性の人体であり,その高さは直径の6倍とするのが望ましく,イオニア式は女性で,直径の8倍の高さがよいとされた。そして円柱直径の1/2を1モデュールと呼び,各部寸法をすべてこれの倍数値で表す方式が,いわゆる〈オーダー〉の体系の根幹となっていた。古典建築の最初の理論家,古代ローマのウィトルウィウスは,こうした比例の体系こそが建築を科学たらしめるものであると信じていたが,同時に,ピタゴラスやプラトンを引用しながら,6という数の神秘性を強調しており,比例の観念と神秘主義,象徴主義との結びつきの深さをおもわせる。…

【プログラミング言語】より

…MLなど,変数に対する型指定が必須ではないが,変数に対して施される演算等から型を推定する機能(型推論)を採用した強い型の言語もある。
[モデュールと情報隠蔽]
 プログラムは大きくなればなるほど,全体を一度に見渡して理解することは困難になる。そのため,プログラムをいくつかの部分に分割して,その部分単位で開発したり理解できることが望ましい。…

※「モデュール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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