セカンド・ベスト理論(読み)せかんどべすとりろん(英語表記)theory of the second best

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

セカンド・ベスト理論
せかんどべすとりろん
theory of the second best

社会全体にとって資源配分のもっとも望ましい状態は、経済学ではパレート最適として知られている。複数個の産業から成り立つ経済で、このパレート最適を達成するには、生産物の価格とその限界生産費用とが等しい完全競争の状態が、すべての産業において成立する必要がある。すべての産業において完全競争の状態が成立しているときに、ファースト・ベストfirst bestすなわち、その社会にとってもっとも望ましい資源配分が達成できる。
 しかし、現実の経済では、生産物の価格とその限界生産費用が等しい完全競争の条件がすべての産業において成立しているわけではない。たとえば、間接税が賦課されていたり、一部の産業にみられるように独占的な企業があるときには、これらの産業では、価格は一般的に限界生産費用よりも高くなる。このように、完全競争の条件が成立しない産業が一つでもあるときには、もっとも望ましい状態であるパレート最適は達成できない。
 そこで考えられるのが、次善のパレート最適である。いくつかの産業で、価格が生産費用に等しいという完全競争の条件が成立しないことを前提として、もしも政府がある産業の価格を制御できると考えたとき、次善に望ましい資源配分の状態を達成するために、どのように価格を設定するか、がセカンド・ベストの理論であり、次善理論ともよばれている。
 セカンド・ベスト理論の代表的なものは、価格設定のためのセカンド・ベストの条件はかならずしも価格イコール限界生産費用にすべきではない、というR・G・リプシーとK・ランカスターの理論である。すなわち、この理論は、完全競争の条件が成立しない産業があり、その阻害要因を取り除くことが不可能で、かつ政府がある産業の価格を制御できるとき、その価格は生産費用にかならずしも等しくない、あるいは完全競争の条件をかならずしも満たす必要がない、というものである。
 ファースト・ベストを達成できないときに、セカンド・ベストを導くための条件は、ファースト・ベストを達成するための条件とはかならずしも等しくない、というのがこの理論のエッセンスである。川智教]
『川又邦雄著『次善理論と経済的厚生』(荒憲治郎他編『経済学2 厚生経済学』所収・1975・有斐閣) ▽奥野正寛・鈴村興太郎著『ミクロ経済学』(1985・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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