改訂新版 世界大百科事典 「セキセイインコ」の意味・わかりやすい解説
セキセイインコ
budgerigar
Melopsittacus undulatus
オウム目オウム科の鳥。全長約18cm。背黄青インコの名のように,野生のものは上面が黄色と緑色で,黒い縞があり尾は青い。下面は鮮やかな緑色をしていて,ほおには1個の青い斑と2個の黒い小点がある。くちばしの蠟膜の色は雄が濃青色であり,雌では淡い。オーストラリアの乾燥した内陸に分布し,樹木のまばらに生えた広い草原に大群ですみ,おもに地上を歩きながら草の種子を食べる。繁殖期以外は1ヵ所に定住せず,食物と水を求めてあちこち移動する。ときには移動する大群で空が暗くなることもある。降雨後に,数つがいずつ1本の木のいくつかの樹洞にかたまって営巣する。1年に2~3回繁殖し,1腹4~6個の卵を産む。雌だけで約18日抱卵し,かえった雛には雌雄が食物を吐き戻して与え,雛は約1ヵ月で巣立つ。
セキセイインコは,つがいの雌雄の仲がよく,じょうぶで飼いやすいうえに,巣引も容易であるため,インコ類の中ではいちばん普及している飼鳥である。物まねもうまく,かなりじょうずに話したり,歌をうたったりする。飼鳥としての歴史は,1840年にオーストラリアからイギリスに輸入され,55年にドイツで飼育繁殖に成功したことから始まった。64年には色変りの品種がつくり出され,その後,さらに多くの品種や色変りができた。上面の黒い縞は残っているが,野生型の緑色部がオリーブ色,淡い紫色,青色,コバルト色,白色,灰色になった品種や全身が黄色の品種があり,これらは並セキセイと呼ばれている。一方,野生型の上面の黒い横縞がわずかにあるか,あるいはまったくなく,主色をさまざまに変えたハルクイン系やオパーリン系といった高級セキセイと呼ばれる品種も作り出され,そのほかにも,大型品種や羽毛が巻毛になった品種などもある。現在では32品種に改良され,16世紀以来,ヨーロッパの代表的な飼鳥であったカナリアにとってかわるほどの人気になり,日本でも一般家庭の代表的な飼鳥の一つである。
執筆者:齋藤 隆史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報