セラピオン兄弟(読み)せらぴおんきょうだい(その他表記)Серапионовы братья/Serapionovï brat'ya

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セラピオン兄弟」の意味・わかりやすい解説

セラピオン兄弟
せらぴおんきょうだい
Серапионовы братья/Serapionovï brat'ya

ソ連時代のロシアの作家グループ。1921年ペトログラードサンクト・ペテルブルグ)で結成。E・T・A・ホフマンの作品にちなんで名づけられた。メンバーはフセボロド・イワーノフ、ベニアミン・カベーリン、イリヤ・グルーズジェフ、ミハイル・スロニムスキー、ミハイル・ゾシチェンコ、ニコライ・チーホノフ、ニコライ・ニキーチン、コンスタンチン・フェージン、ウラジーミル・ポズネル、エリザベータ・ポロンスカヤ、レフ・ルンツで、いずれも当時10代から20代の若い文学者である。シクロフスキーティニャーノフなどのいわゆる形式主義(フォルマリズム)の理論家や、作家ザミャーチンなどの影響下にあって、文学形式の実験に強い関心を示した。革命直後のソ連時代にあっては非政治的ないわゆる同伴者として分類されたが、明確な綱領をもっていたわけでなく、作風もまちまちであり、「兄弟」を結び付けていたのは、創作に対する若々しい情熱と、芸術の自律性に対する信念である。共同出版には、『セラピオン兄弟文集』(1922、ペトログラードおよびベルリン)がある。

沼野充義

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「セラピオン兄弟」の意味・わかりやすい解説

セラピオン兄弟 (セラピオンきょうだい)
Serapionovy brat'ya

1921年初めソビエトのペトログラード(現,サンクト・ペテルブルグ)で結成された文学団体。《世界文学》出版所に拠ったシクロフスキー,ザミャーチンのゼミナール母体となった。E.T.A.ホフマンの同名の小説中の隠者が命名の由来で,V.V.イワーノフ,ゾーシチェンコ,カベーリン,フェージン,チーホノフらが主要メンバーであり,夭折したルンツLev Luntsが理論的指導者と目された。統一綱領をもたぬ,ゆるやかな組織だったが,共通して,傾向的な政治主義の否定が掲げられ,ロシア革命と国内戦の時代の〈新しい素材に見合う新しい技法の開拓〉が目標とされた。22年に《文学雑記Literaturnye zapiski》誌に発表されたメンバーの自伝と,同年刊行された実験的な文集《セラピオン兄弟》がグループの仕事として残っている。才能ある作家を集め,メンバー個々の創作活動も盛んだったので,プロレタリア文学系団体の声高なイデオロギー批評が支配した20年代に,非政治主義的,芸術的な同伴者作家グループとして大きな影響力をもった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セラピオン兄弟」の意味・わかりやすい解説

セラピオン兄弟
セラピオンきょうだい
Serapionovye Brat'ya

ソ連の文学グループ。 M.ゴーリキー,E.ザミャーチン,V.シクロフスキーらに教えを受けていた若い世代の作家たちによって 1921年2月に結成された。極端なまでの非政治主義を標榜し,L.ルンツ,M.ゾシチェンコ,A.スロニムスキー,I.ニキーチン,E.ポロンスカヤ,I.グルーズジェフ,V.カベーリン,N.チーホノフ,K.フェージン,V.イワーノフの 10人の作家を集め,「同伴者作家」のなかの中心的グループとして,20年代の初めに活躍した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android