改訂新版 世界大百科事典 「フェージン」の意味・わかりやすい解説
フェージン
Konstantin Aleksandrovich Fedin
生没年:1892-1977
ソ連邦の小説家,ソ連邦科学アカデミー会員。父は農奴出の小商人,母は貴族出の教師の娘。ドイツ留学中,第1次世界大戦で抑留され,1918年帰国。21年〈セラピオン兄弟〉同人となり,チェーホフとブーニンの影響の色濃い最初の短編集《荒野》(1923)でデビューした。長編《都市と歳月》(1924)で19世紀リアリズムの伝統をつぐロマンを復活させた。複雑な手法と構成で書かれたこの作品で彼は,ロシア革命期における個人と新しい倫理の問題をとりあげたが,これをさらに発展させ,芸術家と革命の関係を追究したのが次の長編《兄弟》(1928)である。しかし,彼が作家としての力量を存分に発揮したのはここまでで,これ以後体制側の論理を容認し,文壇中枢に近づくにつれて,作品の力は弱くなっていった。ソ連と西欧の関係を扱った長編《ヨーロッパの略奪》(1933-35)は時事的テーマではあるが,芸術性に乏しい。三部作《最初の喜び》(1945),《異常な夏》(1948),《かがり火》(1961)は1910年から41年までの,ボルガの田舎町の年代記であるが,ここにはもはや《都市と歳月》をかつて書いた作家の面影はない。59年からソ連邦作家同盟書記長,71年から同議長という経歴の示すとおり,晩年の彼は作家というよりは文学官僚であり,1958年パステルナークが《ドクトル・ジバゴ》でノーベル賞を受けた際にも,この旧友を作家同盟から除名するうえで大きな役割を果たして若い世代の信頼を失った。
執筆者:原 卓也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報