日本大百科全書(ニッポニカ)「テーブルクロス」の解説
テーブルクロス
てーぶるくろす
table cloth
食卓用のテーブルに主としてかける布のこと。実用上と飾りとを兼ねていることが多い。テーブルクロスが食卓に用いられるようになったのは8世紀ごろからといわれる。フランスのほうが古くから使われ、その後10世紀ごろからイギリスでもよく使われるようになったといわれる。ナイフ、フォーク、スプーンなどが、日常の食事で使われるようになるまでは、手づかみで料理を食べることも多く、汚れた手をテーブルクロスの裾(すそ)でぬぐったという。フィンガーボウルなどがあるのは、その名残(なごり)ともいえる。ただ、11世紀ごろになると、イギリスでは、テーブルクロス以外に、手ふき専用の小布を食卓に置くようになった。これがナプキンである。
テーブルクロスは、食器が食卓の材質、たとえば木や大理石などに当たって音をたてたり、滑ったりするのを防ぐことにも役だった。テーブルクロスの材質は、実質的なものには、洗濯に耐えられる地の厚い木綿や麻が使用され、色も清潔感のある白や淡色のものが多い。装飾的なものには、織り模様、染め模様を施したもの、刺しゅうしたもの、ビロード、レース編みなどがある。近年はビニルのクロスも使用されるようになったが、汚れは落ちやすいものの、感触、色などはあまりよい感じを与えない。
[河野友美・大滝 緑]