翻訳|tablecloth
テーブル掛けともいうが,食事の際に食卓にかける布と,装飾的なものに大別される。後者はテーブルカバーともいい,ビロード,つづれ織をはじめ織模様や染模様をだしたもの,刺繡(ししゆう)をほどこしたもの,レース編によるものなどがあり,室内装飾の一要素となっている。テーブルの中央におく小型のものもあり,同様に卓上を飾る銀器やガラス器などを含めてテーブルセンターあるいはセンターピースと呼ぶ。
西洋ではフォークが一般化するまで手づかみで食事をしていたので,テーブルクロスが現れたのはフランスではカロリング朝のルイ(ルートウィヒ)1世(在位814-840)の時代から,イギリスではアングロ・サクソン時代(8~10世紀)からとみられ,食事の際に1皿ごとに手を洗ってテーブルクロスの自席の部分でぬぐった。1530年にエラスムスの書いた作法書に〈汚れた手はテーブルクロスでぬぐうのが最も上品である〉と書かれている。しかしイギリスでは11世紀ころ,食事の際にテーブルクロスの上にのせられた布で手をふいたというし,フランスでも14世紀に小型のテーブルクロスが大型のテーブルクロスの上に置かれるようになったといわれている。これはそのころからぜいたくなリネンのテーブルクロスが現れたので,それを汚さないために発生した風習のように考えられる。
今日のようにテーブルクロスとナプキンがはっきり分かれたのはフランスでは16世紀ころであったとみられる。西洋では伝統的にテーブルクロスとナプキンには高級のリネン(テーブルリネンと総称する)を用い,そのセットを花嫁が持参する風習で,花嫁の頭(かしら)文字を刺繡し,結婚後も花嫁の私有財産とみなされている。今日でも正式な夜食のテーブルクロスには,リネンのダマスク織が尊重されている。
執筆者:春山 行夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
食卓用のテーブルに主としてかける布のこと。実用上と飾りとを兼ねていることが多い。テーブルクロスが食卓に用いられるようになったのは8世紀ごろからといわれる。フランスのほうが古くから使われ、その後10世紀ごろからイギリスでもよく使われるようになったといわれる。ナイフ、フォーク、スプーンなどが、日常の食事で使われるようになるまでは、手づかみで料理を食べることも多く、汚れた手をテーブルクロスの裾(すそ)でぬぐったという。フィンガーボウルなどがあるのは、その名残(なごり)ともいえる。ただ、11世紀ごろになると、イギリスでは、テーブルクロス以外に、手ふき専用の小布を食卓に置くようになった。これがナプキンである。
テーブルクロスは、食器が食卓の材質、たとえば木や大理石などに当たって音をたてたり、滑ったりするのを防ぐことにも役だった。テーブルクロスの材質は、実質的なものには、洗濯に耐えられる地の厚い木綿や麻が使用され、色も清潔感のある白や淡色のものが多い。装飾的なものには、織り模様、染め模様を施したもの、刺しゅうしたもの、ビロード、レース編みなどがある。近年はビニルのクロスも使用されるようになったが、汚れは落ちやすいものの、感触、色などはあまりよい感じを与えない。
[河野友美・大滝 緑]
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