デンタルショック(読み)でんたるしょっく(英語表記)dental shock

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

デンタルショック
でんたるしょっく
dental shock

歯科治療時におこる突然の身体的・精神的障害の総称。ショックは、血液の容器である血管の容積は変わらないで、血液の量が減少した場合、あるいは逆に、血液の量は変わらないで血管が拡張し、その容積が大きくなった場合に生じる。ショックがおこると血圧は低下し、脳やたいせつな臓器の血液の循環が悪化し、ときには生命を脅かすこともある。歯科治療時におけるショックには、次のようなものがある。
(1)疼痛(とうつう)性ショック 歯を治療するときの痛みが原因となって、反射的に脳の循環障害を生じた場合におこる。気分が悪く、吐き気がするようになり、また、顔色も悪くなる。とくに患者が恐怖心を抱いたり、不安な状態で精神的に緊張しているとショックをおこしやすい。口の中の注射、歯の切削、歯髄の摘出等の際、恐怖心を抱いていると、その痛みの刺激で三叉(さんさ)迷走神経反射がおき、血圧降下、脈拍減少など、脳貧血の症状を呈する。予防のためには、恐怖心を和らげるほか、無痛処置などの疼痛抑制法がとられる。
(2)局所麻酔剤中毒 局所麻酔剤の使用量が多すぎるとき、血中の局所麻酔剤の濃度が上昇し、中枢神経や心臓を抑制するために生じる。しかし、歯科治療時の局所麻酔剤は量が少ないため、中毒をおこす可能性は少ない。
(3)局所麻酔剤のアレルギー 麻酔剤に対して過敏な人に、この麻酔剤を投与するとショック症状をおこす。防止するためには、あらかじめ局所麻酔剤の過敏反応のテストを行う。また、ラテックスアレルギーをもつ患者は歯科医のゴム手袋によって腫脹やじんましん、ぜんそく発作、アナフィラキシー反応などのアレルギー症状をおこすことがあり、注意が必要である。
(4)血管収縮剤と心疾患 普通、局所麻酔剤には、麻酔効果の延長と急性中毒の防止のために血管収縮剤が含まれている。なかでも、もっとも多く用いられているのがアドレナリンである。しかし、アドレナリンは心臓を刺激するため、心疾患のある人には悪影響(心機能不全による肺水腫(すいしゅ)やショック)を及ぼすことがある。予防のためには、まえもって心疾患の有無を確認することが必要である。[土谷尚之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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