改訂新版 世界大百科事典 「トゥクロール族」の意味・わかりやすい解説
トゥクロール族 (トゥクロールぞく)
Toucouleur
西アフリカ,セネガル北端のセネガル川中流一帯,フータ・トロ地域に住み,農耕を主とする部族。自称のハール・プラール(フルベ語を話す人々)のとおり,牧畜を主とするフルベ族と同じ言語を話す。トゥクロールという呼称は,10世紀以前からこの地にあった西アフリカの古王国テクルールからきていると考えられる。早く(11世紀)からイスラム化し,かなりまとまっていたようであるが,16世紀半ば外部からの征服者コリ・テンゲッラによって統一された。社会組織は階級制を基盤とし,自由民,各種の専門職集団,奴隷集団などが世襲,内婚を守っていた。宗教貴族集団であるトーロッベが中心となり,西アフリカにイスラムを広める原動力となった。特に,19世紀半ば,セネガルはもとよりマリからナイジェリアにまで及ぶ広域でイスラムを広めるための聖戦をおこしたハジ・ウマルはよく知られている。20世紀にはいりセネガル川流域の経済が停滞してゆくにともなって,トゥクロール族は生活防衛の手段として都市へ出稼ぎにゆく人が多くなった。
→ハジ・ウマル
執筆者:小川 了
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報