日本大百科全書(ニッポニカ) 「トビネズミ」の意味・わかりやすい解説
トビネズミ
とびねずみ / 跳鼠
jerboa
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目トビネズミ科に属する動物の総称。この科Dipodidaeの仲間には11属30種があり、シベリアからアジアを経てアフリカ北西部までに広がる、砂漠やステップなどの乾燥した地域に分布する。頭胴長4~26センチメートル、尾長7~30センチメートル、後足長1.8~9.8センチメートル。尾は頭胴より長く、後肢や後足も著しく長くて、カンガルーのように尾でバランスをとり、跳躍して走る。後足の中足骨は癒合して1本の管骨となり、指は第1および第5指が退化して小さく、種によっては消失している。前肢は著しく短く、歩行には使わず、食物を持ったり穴を掘るのに使う。多くは目と耳が大きく、尾の先端には毛房があり、体色は砂色か黄褐色が多い。群れで生活し、夜行性で、地下にトンネルを掘ってすむ。食物は植物や昆虫などである。
3指の種では、カフカス、東北イランから東北中国に分布するキタミユビトビネズミDipus sagittaは頭胴長10~15センチメートル、尾長14~19センチメートル、体重は80グラムぐらいであるが、秋には100グラムほどになり、冬眠する。妊娠期間は25~30日で、3~4子を産む。そのほか、南西トルキスタンのケアシトビネズミParadipus ctenodactylus、サハラ砂漠からイラン、西パキスタンまでに5種が分布するサバクトビネズミ属Jaculus、ウクライナからモンゴルにかけてのフトオミユビトビネズミStylodipus telum、アラル海からゴビ砂漠までに頭胴長4~5センチメートル、尾長9~12センチメートルの5種が分布するチビミユビトビネズミ属Salpingotusなどが3指である。第1指を欠く4指の種としては、南西パキスタンに分布し、頭胴長4センチメートル、尾長8センチメートルのピグミートビネズミSalpingotulus michaelis、およびリビアとエジプトに分布するヨツユビトビネズミAllactaga tetradactylaがいる。5指の種には、リビアからモンゴルに頭胴長9~26センチメートル、尾長14~30センチメートルのイツユビトビネズミ属Allactaga10種、モンゴルからイランにコガタイツユビトビネズミAllactagulus punilio、カザフスタンに分布し冬眠するオブトトビネズミ属Pygeretmus2種、モンゴルにチビイツユビトビネズミCardiocranis paradoxus、新疆(しんきょう)からモンゴルにオオミミトビネズミEuchoreutes nasoなどが知られている。
[土屋公幸]