イタリアのトリチェリが1643年に同僚のビビアーニVincenzo Viviani(1622―1703)とともに行った実験で、真空と大気圧の存在を示したもの。一端を閉じた長さ1メートル余りのガラス管に水銀を満たし、それを水銀の入った容器に倒立させると、ガラス管の中の水銀は76センチメートルの高さまで下降して止まり、ガラス管の上部は真空となる。これは人類が初めてつくった真空であり、トリチェリの真空とよばれる。この時代までは、アリストテレス流の自然学に従って真空はありえないと考えられてきたが、彼は真空の存在を実験によって示したのである。
トリチェリはまた、ガラス管内の水銀が中途に止まる原因を大気の重さに帰して、地表は深さ数十キロメートルの大気の海の底であり、容器の水銀面にかかる大気の重さ(正しくは圧力)が水銀柱の重さとつり合ってそれを支えているのだと論じた。それまで「自然は真空を嫌悪する」ということばによって説明されてきた揚水ポンプの「吸い上げ」のような現象にも、ほぼ正しい説明が与えられた。彼はさらに大気の重さ(気圧)が日々変動することにも気づいており、トリチェリの実験は最初の気圧測定でもあったわけである。この実験を契機として17世紀なかば以後、真空に関するさまざまな実験的研究が行われ、真空の存在と大気圧の作用が明らかにされていった。
[内田正夫]
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新