ヌッセルト数(読み)ヌッセルトスウ

化学辞典 第2版 「ヌッセルト数」の解説

ヌッセルト数
ヌッセルトスウ
Nusselt number

記号Nu流体伝熱速度に関する無次元数の一つで,

NuhD
(h境膜伝熱係数Dは代表長さ,κは熱伝導率)で表される.流体の有効境膜の厚さをxとすると,ヌッセルト数は

NuD/x
となり,その物理的意味は代表長さと有効境膜の厚さの比となる.一般に次のような関係式で表される.

Nuf(ReGrPr)

プラントル数Prは流体の物性の影響を表し,また流体の流れが乱流の場合にはレイノルズ数Re,自然対流の場合はグラスホフ数Grが支配的因子となる.一様な平行流れのなかに置かれた直径Dの球については,次のような式が成立する.

Nu = 2.0 + 0.6Re1/2Pr1/3

(1 < Re < 70000,0.6 < Pr < 400)

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヌッセルト数」の意味・わかりやすい解説

ヌッセルト数
ヌッセルトすう
Nusselt number

流体とそれに接する物体との間の対流による伝熱の大きさを表わす無次元数。流体の代表的な温度T0 ,物体の温度を T1 ,流体の熱伝導率を k ,物体の代表的な長さを L ,物体表面の面積 A を通して単位時間に出入りする熱量Q とするとき,h=(Q/A)/|T0T1| を熱伝達率といい,さらにこの hを無次元化した NuhL/k をヌッセルト数という。

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法則の辞典 「ヌッセルト数」の解説

ヌッセルト数【Nusselt number】

質量輸送現象の解析に用いられる無次元の数.記号はNu.境膜伝熱係数 h と,対象装置の代表的長さ l,流体の熱伝導率を k としたとき hl/k で表される.「代表的長さ」とは場合によって異なるが,円管内を流れる流体と管壁との伝熱の場合には管の内径,円管の外側を管の向きと直角に流れる流体管の伝熱の場合には管の外径平板と平行に流れる流体と平板間の伝熱の場合には平板の長さなどが用いられる.別な表現をとるならば,質量輸送係数に,輸送が行われる層の厚みをかけて,分子拡散率で割ったものである.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヌッセルト数の言及

【次元解析】より

…たとえば,流れによる伝熱という現象では,伝熱係数hを含む無次元数は熱伝導率をkとしてhd/kとなる。これはヌッセルト数と呼ばれ,Nuと書かれる。この現象に関係する無次元数はほかにはレーノルズ数しかない。…

【対流】より

…熱伝達において,壁面の単位面積を単位時間に通過する熱量qを,壁面と流体の温度差⊿Tで割った値hq/⊿Tを熱伝達率と呼び,この値が大きいほど熱授受の良好さを示す。流れを代表する寸法をL,流体の熱伝導率をλとしたとき,NuhL/λで定義される無次元数をヌッセルト数Nusselt numberと呼ぶ。次元解析によると,ヌッセルト数は,強制対流の場合,同じく無次元数であるプラントル数Prandtl number(流体の粘性率をμ,定圧比熱をcpとして,cpμ/λで定義される)とレーノルズ数の関数に,また自然対流の場合にはプラントル数とグラスホフ数Grashof number(重力加速度をg,流体の動粘性率をν,熱膨張率をβとしてL3βg⊿T2で定義される)の関数になる。…

※「ヌッセルト数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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