改訂新版 世界大百科事典 「無次元数」の意味・わかりやすい解説
無次元数 (むじげんすう)
dimensionless number
物理的に観測される量は必ず次元をもっている。しかしこれらの量を掛けたり割ったりすると無次元の単なる数が得られることがある。これを無次元数という。最も簡単な無次元数は長方形の縦,横の長さの比である。一般に比は無次元数である。マッハ数は物体の速度と音速の比であるから無次元数である。単なる比ではない無次元数もある。その代表的なものはレーノルズ数である。レーノルズ数は速度U(m/s)と長さL(m)の積を動粘度ν(m2/s)で割ったものであって,確かに無次元数である。次に無次元数はどんな意味をもつのであろうか。もし二つの長方形の縦横比が同じなら,それらの長方形は相似であるのと同様に,レーノルズ数が同じなら,流れの様子が相似であることが証明されている。レーノルズ数を同じにすれば模型を使って実物の飛行機の性能を調べることができることになる。このように無次元数は相似の概念と結びついており,二つの系が幾何学的あるいは力学的に相似であるための条件を与えるものである。
執筆者:西村 肇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報