インド南部,アーンドラ・プラデーシュ州中西部にある同州の州都。ハイデラバードとも呼ばれる。人口361万2427(2001)。パキスタン南部の同名の都市と区別するため,デカン高原中部に位置するこの都市をハイダラーバード・デカンと呼ぶことがある。ムーシ川の南北両岸にまたがる狭義のハイダラーバードと人造湖フセイン・サーガル(1592建設)を介してその北に広がるシカンダラーバードSecunderābādの二つからなる双子町をなす。
1565年のターリコータの戦でビジャヤナガル王国がムスリムの連合軍に敗北した結果,西方8kmのゴールコンダ城に拠るクトゥブ・シャーヒー朝が重要性を高め,ここに大都市を生成させる基盤が生まれた。開市伝承によれば,89年に同朝のクトゥブ・ムハンマド・クリーがムーシ川南岸に市壁に囲まれた小都市を建設し,愛妃バーグマティーにちなんでバーガナガルと命名したのに始まるという。91年には伝染病の終息を記念して,市の中央に今も残る塔門チャール・ミナール(〈四つの光塔〉の意)が建設された。1687年にはムガル帝国のアウラングゼーブ帝によって征服され,デカンの中心が彼の名にちなむアウランガーバードに移ったため,一時衰退した。しかし1724年にニザーム・アルムルクが同帝国から自立してハイダラーバード藩王国の基礎を築き,ここに主都を置いた。18世紀末以後の英領インド時代を通じて藩王国の主都として存続し,デカン高原中部の中心都市として今日にいたった。一方,シカンダラーバードは98年のイギリスとの軍事保護条約によって東インド会社軍の駐屯地として建設され,以後デカン高原最大の英軍基地へと成長していった。インド独立後の1948年に軍事的にインドに併合され,56年の言語別州再編以後は現在の州都となった。
狭義のハイダラーバードのうちムーシ川南岸地区は最初に建設された部分で,チャール・ミナールとその南西のメッカ・モスクを中心に衣料品店などからなるバザールが形成され,イスラム文化の影響の強い都市景観をもつ。藩王国宰相の美術コレクション(細密画やヒスイが有名)を収蔵するサラール・ジャング博物館は,同地区の北部にある。また南方にはファラクヌマ宮殿がある。ムーシ川北岸の北地区はスルタン・バザールを中心とする商業地区のほか,諸官庁などの近代的都市施設をもつ。その北東方にはイスラム研究で名高いオスマーニア大学(1918創立)がある。北方のシカンダラーバードは南端の駅周辺の鉄道管理局と鉄道工場,その北方の兵営を中心に発展した新市で緑濃い住宅地が広がる。その郊外には化学肥料,薬品,電機,紡績などの諸工場が立地し,ハイダラーバードの刺繡,ガラス腕輪などの伝統工業とは対照的である。ハイダラーバード南部地区ではイスラム教徒が人口の過半を占めウルドゥー語の普及度も高い。これに対してシカンダラーバードはヒンドゥー教徒が多く,ヒンディー語と英語の使用度も高い。しかし都市拡大の進行とともに両都市の統合が進み,言語も州公用語のテルグ語の普及が著しい。
執筆者:応地 利明
パキスタン南部,シンド州の都市。ハイデラバードともいう。人口116万6894(1998)。インダス川の東岸にあり,西岸のコトリと対向都市をなす。同川の渡河地点また水運の要地として栄えてきた。旧市とその西のイギリス領時代の兵営地区から発達した新市とからなる。周辺は用水路灌漑農業が発達し,そこからの米,雑穀,綿花,マンゴー,ナツメヤシなどの果実を集散する。綿業,金属,セメントなどの諸工業が立地するほか,絹織物,刺繡,宝石加工などの伝統工業が立地する。1843年にイギリスに征服されるまでは,タールプラー族諸侯の支配するシンド王国の首都であった。旧市には当時の城塞が残る。
執筆者:応地 利明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
インド,デカン高原の中心部にある都市。アーンドラ・プラデーシュ州の州都。また,この都市を首都とするイギリス植民地期の藩王国の名称。ハイダラーバード藩王国の起源は,ムガル帝国のデカン総督であったニザームが,18世紀前半に独立政権化したことにさかのぼる。18世紀末にイギリスの軍事保護下に入り,1947年のインド独立後,インドに軍事的に併合された。なお,パキスタンのシンド州にも同名の都市がある。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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