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パラジャーノフ Sergei Iosifovich Paradzhanov

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大辞林 第三版の解説

パラジャーノフ【Sergei Iosifovich Paradzhanov】

1924~1990) ソ連のアルメニア系の映画監督。社会主義体制下で投獄を含むさまざまな迫害を受けながら、美的陶酔の世界を斬新な映像で表現した。監督作品「火の馬」「ざくろの色」「スラム砦の伝説」「アシク=ケリブ」など。

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百科事典マイペディアの解説

パラジャーノフ

アルメニアの映画監督ジョージアトビリシ生れ。父が古物の鑑定士であったため,幼時から骨董品に親しむ。またピロスマニの絵画にも影響を受けた。音楽学校を経てモスクワ映画大学に学んだ後,キエフ撮影所に入所。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

パラジャーノフ
ぱらじゃーのふ
Serguei Paradjanov
(1924―1990)

ソビエト連邦の映画監督。ジョージア(グルジア)の首都トビリシ生まれ。両親はアルメニア人だが、当時のトビリシは民族や文化のるつぼであり、ジョージア人、アルメニア人、アゼルバイジャン人クルド人、アッシリア人、ロシア人、そしてキリスト教徒イスラム教徒ユダヤ教徒らが混在しながら全体として一つの共同体を形づくり、街ではジョージア語アルメニア語アゼルバイジャン語が使用されていた。そうしたバックグラウンドが、「離散の民・アルメニア人」としてのアイデンティティ以上に、パラジャーノフの撮る映画の基底としてあった。父親はロシア皇帝軍の青年士官だったが、ロシア革命後は古美術品や中古品を商う小売店を経営。旧体制下の奢侈(しゃし)品を敵視する時代風潮もあって多くの古美術が売られたことから、子供時代のパラジャーノフ家にはさまざまな来歴をもつ無数の骨董(こっとう)品が積み上げられ、やがて金銭などと交換されて姿を消した。「私はなにか手に持っていると、それを売るか交換するかしないでいれらないのです」と後年パラジャーノフは語っている。彼の作品は、少年時代の記憶の反映として、いつも無数の不可思議なオブジェであふれかえっていた。
 10代なかばから、バイオリン、声楽、演劇、絵画、バレエとさまざまな芸術を学び、演劇の教師の勧めに従って1946年に国立モスクワ映画大学に入学。大学ではイーゴリ・サフチェンコIgor Sarchenko(1906―1950)、ミハイル・ロンムMikhail Romm(1901―1971)両監督に師事した。1947年、深夜に悪ふざけに興じて同郷の学生たちとともに逮捕され、ホモセクシュアルの嫌疑で最初の投獄生活を体験(翌1948年に釈放)。サフチェンコ作品で助監督などを務めた後、1952年、キエフにあるドブジェンコ・スタジオで撮った短編映画『モルダビア物語』Moldvaskaya skazka(1951)が卒業製作として認められ、指導教官だったアレクサンドル・ドブジェンコAlexander Dovzhenko(1894―1956)の署名の入った卒業証書を手にする。
 キエフで数本の長編劇映画を手がけたパラジャーノフに、1964年、ドブジェンコ・スタジオは、ウクライナの作家ミハイル・コツュビンスキーの生誕100年祭に向けた中編小説の映画化を依頼。カルパティア山脈の東側にあるシャビー村で地元民グッツール人の協力も得て撮影された『火の馬』(1964年。原題『忘れられた祖先の影』Teni Zhabytykh Predkov)は、パラジャーノフにとってウクライナへのフォークロア的関心の一環であり、卓越したカメラワークもあって世界の映画祭で注目され、この時期のソ連映画を代表する傑作と評価された。しかし、少数言語であるグッツール語の使用に固執するなどして当局と確執を演じた経緯もあり、国内での評価は芳しくなく、全国公開にまで至らなかった。次にアルメニアのエレバン・スタジオの依頼で、18世紀の著名なアルメニアの吟遊詩人の生涯に独自の解釈を施した代表作『サヤト・ノヴァ』(1969)を完成させ、『火の馬』とうって変わって動きのないカメラによって、パラジャーノフの作品を特徴づける絵画的な世界を初めて呈示した。しかし、この作品は、モスクワ、キエフ、エレバン、トビリシで短期間だけ上映され、「難解な退廃的美学」、あるいは歴史への敬意ゆえに「反ソ連的」といったさまざまな批判にさらされ、ようやく1971年になってセルゲイ・ユトケビチ監督によって再編集された短縮版が『ざくろの色』としてモスクワなどで公開された。
 その後もパラジャーノフにとって不遇の時代は続き、映画化の許可を求めて提出するあらゆる脚本が却下された。さらに彼がウクライナの反体制派作家にかかわる不利な証言を拒否するなどしたことからいらだちを募らせていた当局により、外国為替の不正取引、イコン画窃盗、そして同性愛などの罪状で1973年に逮捕される。秘密裏に進められた審理の末、5年間の自由剥奪(はくだつ)が言い渡され、ウクライナの「重強制労働収容所」に送られたが、この時期、ヨーロッパの著名な映画監督らによる抗議行動が巻き起こり、フェリーニ、ビスコンティ、ブニュエル、アントニオーニ、ゴダールらが情報公開や釈放に向けた抗議の署名を寄せた。結局、刑期満了前の1977年末に釈放されるも、1982年には公務員への贈賄未遂で三度目の逮捕。数か月の予審期間を経て無罪の評決を受けた。この評決ともかかわりをもったと推測される、当時ジョージア共産党第一書記のエドゥアルド・シェワルナゼが押し進める革新的な文化政策の流れのなか、パラジャーノフをめぐる環境もようやく好転する。ジョージア撮影所の依頼で、他民族の侵略に悩まされつづけた中世ジョージアの民話を脚色した『スラム砦の伝説』(1984)を発表。『ざくろの色』の方法論を発展させた本作は、国内でも高い評価を受け、海外でのパラジャーノフ熱にふたたび火をつける。1988年、64歳で初めて国外に出る許可を与えられ、ジョージア人画家をめぐる短編ドキュメンタリー『ピロスマニのアラベスク』(1986)をロッテルダム映画祭で自ら紹介。さらに同年、アゼルバイジャンでロケされたジョージアのスタジオ製作の映画で、ミハイル・レールモントフ原作の映画化『アシク・ケリブ』(1988)を完成させると、この作品を携えてミュンヘンやニューヨークの映画祭に参加、パリのポンピドー・センターでのジョージア映画回顧展にも出席、この時期にパリで彼の全作品回顧上映も行われる。パラジャーノフと彼の作品の「開放」は、ペレストロイカの動きに連なるものだったが、パラジャーノフはゴルバチョフに対して両義的な態度を崩さなかった。実際、ペレストロイカ以後に深刻化した、アルメニア人キリスト教徒とアゼルバイジャン人イスラム教徒との間での血なまぐさい紛争(ナゴルノ・カラバフ戦争)は、文化や人種の混在や横断からなるパラジャーノフ作品における多言語・多民族共存の世界の理想からほど遠いものだった。1989年、不遇時代に書き残した自伝的な脚本『告白』La Confessionの撮影に入った直後に病で倒れ、1990年アルメニアのエレバンにて死去。獄中などでつづった無数の遺稿、美術家としても評価の高かった彼のコラージュやデッサンを主とするアート作品が大量に残された。[北小路隆志]

資料 監督作品一覧

モルダビア物語 Moldvaskaya skazka(1951)
火の馬 Teni Zhabytykh Predkov(1964)
サヤト・ノヴァ Sayat Nova(1969)
ざくろの色 Tsvet granata(1971)
スラム砦の伝説 Ambavi Suramis tsikhitsa(1984)
ピロスマニのアラベスク Arabeskebi Pirosmanis temaze(1985)
アシク・ケリブ Ashug-Karibi(1988)
『「CINE VIVANT No. 44 パラジャーノフ祭」(パンフレット・1991・シネセゾン) ▽セルゲイ・パラジャーノフ著、露崎俊和訳『七つの夢』(1995・ダゲレオ出版) ▽パトリック・カザルス著、永田靖・永田共子訳『セルゲイ・パラジャーノフ』(1998・国文社)』

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