イーゴリ(その他表記)Igor'

改訂新版 世界大百科事典 「イーゴリ」の意味・わかりやすい解説

イーゴリ
Igor'
生没年:?-945

キエフ大公。在位912-945年。リューリク朝事実上開祖年代記ではリューリクの子となっているが,年が開きすぎる。大公オレーグの後を継ぎ,東スラブ諸族を従え,913,943年にカフカス遠征。941年のビザンティン遠征は〈ギリシアの火〉に攻められて失敗したが,944年の再遠征でロシア使節,商行為についてビザンティンと条約を結び,相互軍事援助を約した。またペチェネグ人と初めて衝突し,5年の休戦条約を結んだ。叙事詩的英雄として自ら従士団を率いて遠征し,税を集めたが,ドレブリャニン族に対する2度目の徴税に赴き,殺された。彼の遠征政策は息子スビャトスラフに受け継がれた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イーゴリ」の意味・わかりやすい解説

イーゴリ(ノブゴロド・セーベルスキー公)
いーごり
Игорь Святославич/Igor' Svyatoslavich
(1150―1202)

ロシアのノブゴロド・セーベルスキー公。のちチェルニゴフ公。当初、遊牧民ポーロベツ人を味方にして同胞と戦うなどしたが、1185年ロシアの地を守るべく他の諸公と同盟し、ポーロベツ人に対する遠征を企てた。しかしこの遠征は失敗に終わり、彼は囚(とら)われの身となる。中世ロシア文学最高の作品『イーゴリ遠征物語』は、この事件を歌ったものである。イーゴリはその後脱走し、戦いを続行した。

[栗生沢猛夫]


イーゴリ(リューリク王朝の始祖)
いーごり
Игорь/Igor'
(?―945)

ロシアのリューリク王朝の事実上の始祖。半伝説的人物リューリクの子とされる。912年よりキエフ大公。ドニエストル川とドナウ川間の東スラブ諸族を服属させ、913年にカスピ海方面に進出、941年と944年にはビザンティン帝国の首都コンスタンティノープルに遠征した。その際に結んだ条約(944)は名高い。さらに遊牧民ペチェネグ人などとも戦ったが、945年、遠征中にドレブリャーニン人の反乱にあって倒れた。

[栗生沢猛夫]

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旺文社世界史事典 三訂版 「イーゴリ」の解説

イーゴリ(1世)
Igor Ⅰ

877〜945
キエフ公国の大公(在位912〜945)
年代記ではリューリクの子といわれる。ドニエプル川流域を平定してキエフ公国の支配者となった。2度にわたりビザンツ帝国への侵入を試み,貢納を得た。

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世界大百科事典(旧版)内のイーゴリの言及

【イーゴリ軍記】より

…キエフ・ロシアの叙事文学の代表的作品。南ロシアの諸公のひとりイーゴリIgor’(1151‐1202)が1185年にチュルク系遊牧民ポロベツ族に対して行ったステップへの遠征を題材としている。戦いに敗れて捕らえられたイーゴリがロシアへ帰還したのち,遅くとも87年までに成立した。…

【キエフ・ロシア】より

…キエフの支配者アスコリドとジール(兄弟の公)による860年のコンスタンティノープル攻撃の遠征は,ビザンティンの人びとにも強い印象を残した。北のノブゴロドには,スラブ人の公ワジムを征して権力を握ったノルマン人の伝説的首長リューリクがいたが,その死後,遺児イーゴリを奉じた従士団の長オレーグ(在位882‐912)の軍勢が南下進攻を始め,アスコリドとジールを倒して都市国家キエフの支配者となった。これが882年のことであり,北のノブゴロドと南のキエフは,名目上は単一のリューリク朝君主の共通の支配下に入り,ここに全ロシア的なキエフ・ロシアが誕生するのである。…

【キエフ・ロシア】より

…キエフの支配者アスコリドとジール(兄弟の公)による860年のコンスタンティノープル攻撃の遠征は,ビザンティンの人びとにも強い印象を残した。北のノブゴロドには,スラブ人の公ワジムを征して権力を握ったノルマン人の伝説的首長リューリクがいたが,その死後,遺児イーゴリを奉じた従士団の長オレーグ(在位882‐912)の軍勢が南下進攻を始め,アスコリドとジールを倒して都市国家キエフの支配者となった。これが882年のことであり,北のノブゴロドと南のキエフは,名目上は単一のリューリク朝君主の共通の支配下に入り,ここに全ロシア的なキエフ・ロシアが誕生するのである。…

※「イーゴリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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