日本大百科全書(ニッポニカ) 「パラマウント」の意味・わかりやすい解説
パラマウント
ぱらまうんと
Paramount Pictures Corporation
アメリカの映画会社。パラマウントの社名は1914年にW・W・ホドキンソンWilliam Wadsworth Hodkinson(1881―1971)が創設した配給会社の名に由来する。同社はアドルフ・ズーカーAdolph Zukor(1873―1976)が1912年に設立した製作会社などの作品を扱っていたが、そのズーカーが1916年にホドキンソンにかわって、製作と配給を兼ねた新組織としてのパラマウントの実権を握り、続いて劇場の買収も進め、製作と配給と興行の統合を実現させる。同社は撮影所の運営においてMGMに次ぐ効率を謳(うた)われたが、とりわけヨーロッパからの才能の移入で成果をあげた。すなわち、エルンスト・ルビッチ、ジョセフ・フォン・スタンバーグといった監督、ポーラ・ネグリ、マレーネ・ディートリヒ、モーリス・シュバリエなどのスターが活躍したのがパラマウントであった。1940年代には、脚本家から監督に転じたプレストン・スタージェス、ビリー・ワイルダーに活動の場を与える一方、ボブ・ホープとビング・クロスビー共演の「珍道中」シリーズが人気をよんだ。独占防止法により興行部門の分離を命じる最高裁の判決を受けて迎えた1950年代には、テレビに対抗するための大型映画として、独自のビスタビジョンを開発したが、これはコストの面で成功しなかった。1966年、コングロマリットのガルフ・アンド・ウェスタンに買収されるが、1989年には親会社の方がパラマウント・コミュニケーションズと改めるなど、パラマウントという名称は映画界を超えて重みのあるものとみられている。1994年、バイアコムViacom Inc.が新たなオーナーとなり、21世紀を迎えている。
[濱口幸一]