翻訳|bighorn
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。野生ヒツジの1種で、オオツノヒツジ(大角羊)ともよばれる。シベリア、カムチャツカ半島および北アメリカを経てメキシコまでの山地に分布する。生息地は乾燥した荒れ地で、メキシコでは砂漠の周辺にもすみ、山岳地帯では森林限界より上にも姿をみせる。
最大の野生ヒツジであるアルガリヒツジに次ぐ大形種で、雄で肩高90~110センチメートル、体重140キログラム、雌で肩高80~90センチメートル、体重90キログラムに達する。頑丈な体形をなし、雌雄ともに角(つの)がある。とくに雄の角はその名のとおり巨大で、基部は太く、螺旋(らせん)状に1回転以上曲がり、先端は外方に向かっている。大きなものでは、長さ104センチメートルに達した例がある。体色は生息地や個体によって一定せず、白色、灰色、茶色などの変化がある。しかし、いずれも臀部(でんぶ)には白色の大きな斑紋(はんもん)がある。幼獣では、長い羊毛状の毛があり、色も淡い褐色である。
普通10~70頭ほどの群れをつくって行動するが、夏は雄だけの群れをつくり、雌と子は別の群れをつくる。晩秋から初冬にかけては交尾期で、雄はハレムをつくり、角をぶつけ合う激しい闘争が行われる。妊娠期間は180日ほどで、1産1子、ときに2子を産む。子は生後1か月で離乳し、柔らかい草を食べ始める。草食性で、水場周辺の草地をおもな採食場とするが、冬季には地衣類、キノコなどをあさる。飼育下で20年の生存記録がある。日本の動物園でも飼育例があり、横浜市立金沢動物園ではシンボルマークとなっている。
[中川志郎]
『E・T・シートン著、今泉吉晴監訳『シートン動物誌9 バッファローの大移動』(1998・紀伊國屋書店)』
偶蹄目ウシ科の哺乳類。オオツノヒツジともいい,大きならせん状の角をもったヒツジ。シベリアから北アメリカ北西部に分布するものはビッグホーン1種とされたが,近年ではカナダ南西部からメキシコ北部に至るロッキー山脈に生息するもののみをアメリカビッグホーンO.canadensis(英名American bighorn sheep,mountain sheep)とし,アラスカからブリティッシュ・コロンビアに分布するものをダルビッグホーン(ドールビッグホーン,ストーンシープ,ダルシープDall's sheep)O.dalli,シベリア北東部のものをシベリアビッグホーン(スノーシープ)O.nivicola(英名Siberian bighorn)とすることが多い。肩高76~107cm,体重は雄で56~124kg,雌で33~68kg。体はがんじょうで,角は雌雄にあり,雄のは基部が太く,大きく,長さ84cmに達する。体は柔毛が密生し,灰褐色ないし褐色。険しい山地の岩地に群れですみ,深い森林には生息しない。群れは10~75頭で,交尾期以外では雌雄は別々の群れをなす。草食性で水辺の草地を採食場とし,春にはヒースやヤナギの芽,夏には草,秋から冬にかけてはキノコ,地衣類,果実などをよく食べる。交尾期は10月末から初冬にかけてで,雄どうしは角を激しくぶつけあって闘う。ぶつかる部分の頭骨は厚く,スポンジ状に空洞があり,脳への衝撃が減らされる。妊娠期間は約180日。1産1子,ときに2子を生む。寿命は野生で15年前後といわれる。
執筆者:今泉 忠明
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…ユーラシア系の種には,家畜のヒツジの原種と見られるムフロンO.musimon(サルデーニャとコルシカ)とアジアムフロンO.orientalis(小アジア,イランなど。ただしこれらを同一種とみなす学者もあり,その場合はムフロンの学名はO.orientalisとなる)のほか,ウリアルO.vignei(イラン,カシミール)およびアルガリO.ammon(アルタイ,ヒマラヤ)があり,アメリカ系の種にはビッグホーンO.canadensisがある。ビッグホーンは,シベリアビッグホーンO.nivicola(シベリア北東部),ダルビッグホーンO.dalli(アラスカ,カナダ)およびアメリカビッグホーンO.canadensis(カナダ南西部からメキシコ北部まで)の3種に細分されることがある。…
※「ビッグホーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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