医学者ピックArnold Pick(1851―1924)が最初に報告した認知症性疾患で、この疾患の研究から発展して認知症の一疾患群をさす「前頭側頭型認知症」(frontotemporal dementia:FTD)、あるいは神経病理学的分類としての「前頭側頭葉変性症」(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)という概念が生まれた。したがってピック病はFTDの中心に位置づけられる。
FTDは、大脳の前方にある前頭葉や側頭葉に萎縮(いしゅく)を呈し、人格変化や行動異常を特徴とする複数の認知症性疾患の総称である。ピック病の最終診断には、神経細胞内にピック球という球形や楕円(だえん)形をした封入体(異常物質が集積した構造物)が認められる必要がある。しかし、ピック球はFTDに属するすべての疾患にみられるわけではない。脳内に蓄積している異常タンパクに対応して、FTDはいくつかの原因疾患に分類される。なおピック病は指定難病医療費助成制度の対象である「前頭側頭葉変性症(行動異常型前頭側頭型認知症)」にほぼ相当する(助成の対象となる)。
[朝田 隆 2024年3月19日]
(2014-8-12)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,感情・意欲障害が治療により軽快すると,知能低下が多少改善される場合もある。
[痴呆の種類]
痴呆を示す疾患は種々あるが,40歳代で発病し急速に進行するものには初老期痴呆という脳の変性疾患(アルツハイマー病,ピック病)がある。また,30歳代で発病し,慢性進行性に経過するハンチントン舞踏病,50歳代に発病するパーキンソン症候群などの変性疾患も痴呆をきたす。…
※「ピック病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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