ピック病(読み)ピックビョウ(その他表記)Pick's disease

デジタル大辞泉 「ピック病」の意味・読み・例文・類語

ピック‐びょう〔‐ビヤウ〕【ピック病】

Pick's disease初老期に発病する進行性の大脳変性疾患若年性認知症一種。大脳が局所的に萎縮いしゅくし、変性する。頻度アルツハイマー病の3分の1~10分の1とされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピック病」の意味・わかりやすい解説

ピック病
ぴっくびょう
Pick's disease

医学者ピックArnold Pick(1851―1924)が最初に報告した認知症疾患で、この疾患の研究から発展して認知症の一疾患群をさす「前頭側頭型認知症」(frontotemporal dementia:FTD)、あるいは神経病理学的分類としての「前頭側頭葉変性症」(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)という概念が生まれた。したがってピック病はFTDの中心に位置づけられる。

 FTDは、大脳の前方にある前頭葉側頭葉に萎縮(いしゅく)を呈し、人格変化や行動異常を特徴とする複数の認知症性疾患の総称である。ピック病の最終診断には、神経細胞内にピック球という球形楕円(だえん)形をした封入体(異常物質が集積した構造物)が認められる必要がある。しかし、ピック球はFTDに属するすべての疾患にみられるわけではない。脳内に蓄積している異常タンパクに対応して、FTDはいくつかの原因疾患に分類される。なおピック病は指定難病医療費助成制度の対象である「前頭側頭葉変性症(行動異常型前頭側頭型認知症)」にほぼ相当する(助成の対象となる)。

[朝田 隆 2024年3月19日]

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知恵蔵mini 「ピック病」の解説

ピック病

認知症の1種である前頭側頭型認知症の別名名称はアーノルド・ピックという医師が報告したことに由来する。大脳の前頭葉・側頭葉が萎縮するのが特徴で、同症にいたる原因は分かっていない。症状の特徴としては、怒りっぽくなるなど人格や性格が極端に変わってしまうような変化や、同じことを繰り返す、店でものをとって食べて平然としているなどの日常生活での常識を外れた行動異常が見られることで、次第に記憶障害や言葉が出ないなどの神経症状が現れ、最終的には重度の認知症に陥る。発祥はアルツハイマー病の3分の1〜10分の1と言われている。現在のところ、有効な治療薬や進行を遅らせる薬は存在していない。

(2014-8-12)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピック病」の意味・わかりやすい解説

ピック病
ピックびょう
Pick's disease

アルツハイマー病とともに初老期痴呆と呼ばれる変性疾患。大脳皮質に限局性萎縮がみられるが,原因は不明。人格的な変化が目立ち,自制力が減退し,無分別になる。外界に対する関心も乏しくなる。むとんちゃく,不熱心,他者の質問をそらす,特異な言葉を繰返す,などが特徴としてみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のピック病の言及

【痴呆】より

…また,感情・意欲障害が治療により軽快すると,知能低下が多少改善される場合もある。
[痴呆の種類]
 痴呆を示す疾患は種々あるが,40歳代で発病し急速に進行するものには初老期痴呆という脳の変性疾患(アルツハイマー病,ピック病)がある。また,30歳代で発病し,慢性進行性に経過するハンチントン舞踏病,50歳代に発病するパーキンソン症候群などの変性疾患も痴呆をきたす。…

※「ピック病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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