若年性認知症(読み)ジャクネンセイニンチショウ(英語表記)early-onset dementia

デジタル大辞泉 「若年性認知症」の意味・読み・例文・類語

じゃくねんせい‐にんちしょう〔‐ニンチシヤウ〕【若年性認知症】

65歳未満で発症する認知症総称アルツハイマー病脳血管障害ピック病などで起こる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「若年性認知症」の意味・わかりやすい解説

若年性認知症
じゃくねんせいにんちしょう
early-onset dementia

60歳未満もしくは65歳未満で発病する認知症をいい、EODと略称される。しかしこれは通称であり、正しくは18歳以降44歳までに発症する認知症を「若年期認知症」、45歳以降64歳までに発症するものを「初老期認知症」とよぶ。

 日本ではこれまでに3回にわたってEODの患者数の全国調査が行われてきた。こうした調査では、全国で約4万人弱とほぼ一定の患者数が報告されている。世界的にはEODの原因疾患としてアルツハイマー病が最多とするものが多い。一方、日本の最初の2回の調査では、血管性認知症が最多という結果であった。しかし最新の調査においては、日本でもアルツハイマー病が最多という結果が示されている。なお血管性認知症以外では、頭部外傷後遺症や前頭側頭型認知症も多い。

 EODの当事者と家族が直面する問題は数多く、また深刻である。EODを老年期の認知症と比較すると、経済、就労、医療・ケア、家族の絆(きずな)、どの面をとっても対応はきわめて困難である。それにもかかわらず、この大きな課題は長らく手つかずの状態にあり、ようやく近年になって注目されるようになった。最近では、国のレベルでEODにかかわる総合的情報の提供をはじめ、医療制度経済面、雇用制度などにおける対応策が徐々に広がりつつある。また近年注目される「ヤングケアラー」、つまり病気障害のある家族・親族介護を日常的に行っている未成年者において、EODはその介護対象として重要な位置を占める。さらに認知症の家族会においてもEODに関する問題の深刻さが認識され、これに特化した組織活動も行われている。

[朝田 隆 2024年3月19日]

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知恵蔵 「若年性認知症」の解説

若年性認知症

18歳以上、65歳未満で発症する認知症の総称。65歳以上で発症する老人性認知症と同様に、脳血管障害やアルツハイマー病などによってもの忘れ、言語障害などの症状が現れる。
2009年3月に厚生労働省の調査結果が公表され、全国で推計3万7千800人の患者がいることが明らかになった。人口10万人当たりにすると47.6人で、男女別では男性が57.8人、女性が36.7人と男性の方が多い。働き盛りの40代後半では、人口10万人に27.1人が若年性認知症に罹患(りかん)しているとされ、年齢を追うごとに急激に増加し、60代前半では189.3人に達する。基礎疾患としては、脳血管性認知症、アルツハイマー病が大半を占めるが、頭部外傷後遺症、前頭側頭葉変性症、アルコール性認知症などの疾患が原因となっていることもある。
老人性認知症が人口10万人に7千~8千人と言われているのに対して人数は少ないが、働き盛りの若年者の認知症は家族にも大きな影響を与え、問題となっている。前述の厚労省の調査では、介護家族の約6割が抑うつ状態にあると判断され、約7割が収入が減ったと回答している。06年に公開された「明日の記憶」で主演の渡辺謙が若年性認知症を患う主人公を演じ、多少認知度は高まったものの、周囲の理解がないことによる本人や家族のストレスもいまだ大きい。
そのため、国は09年度にはコールセンターの開設、自立支援ネットワークの構築などのほか、ケア・モデル事業を実施するなど、若年性認知症患者とその家族の支援を行っていくとしている。

(小林千佳子 フリーライター / 2009年)

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