フィードラー(Leslie Aaron Fiedler)(読み)ふぃーどらー(英語表記)Leslie Aaron Fiedler

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フィードラー(Leslie Aaron Fiedler)
ふぃーどらー
Leslie Aaron Fiedler
(1917―2003)

アメリカの文芸・文化批評家。主著『アメリカ小説における愛と死』(1960)で、アメリカ小説に繰り返し現れる神話的パターンを、社会を支える成熟した男女の愛に背を向けた少年期的同性愛という形で掘り起こし、批評界に衝撃的デビューを果たした。作品そのものを突き抜けて、作品を生み出す文化の原型をとらえようとする彼の「文学人類学」的方法は、『終りを待ちながら』(1964)、『消えゆくアメリカ人帰還』(1968)などの論考に一貫するもので、その広域に及ぶ関心と大胆な論調は、以降の世代の文芸批評のスタイルに決定的影響を与えたといわれる。ゴシック小説SFメロドラマ、漫画、見せ物など、大衆的想像力に直結したジャンルとのかかわりは、『フリークス』(1978)など後年の著作でますます顕著である。ほかに自伝的反体制宣言『逮捕されて』(1969)があり、小説をはじめとする創作活動も旺盛(おうせい)だった。

[佐藤良明]

『佐伯彰一他訳『アメリカ小説における愛と死』(1989・新潮社)』『井上謙治・徳永暢三訳『終りを待ちながら』(1989・新潮社)』『渥美昭夫・酒本雅之訳『消えゆくアメリカ人の帰還』(1972・新潮社)』『伊藤俊治・大場正明訳『フリークス』新版(1999・青土社)』

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