無意識を対象とする精神分析的心理学のことをいう。一般の心理学では意識的な知覚、記憶、思考などが研究され、方法的には客観的に観察されることが重視される。これに対して精神分析は、意識よりも、意識されることのない無意識を重視する。それというのも意識は無意識によって明らかにされるものだからである。この意味で、意識(表層)でなく無意識(深層)を研究しようとする精神分析のことを深層心理学という。
フロイトの精神分析は前期と後期では重点の置きどころが変わり、前期における研究の中心であった無意識にかわって、後期においては自我が問題として取り上げられるようになった。そのため前期と後期を区別するために前期を深層心理学、後期を自我心理学とよんでいる。この意味では深層心理学は意識心理学に対立するものでなく、自我心理学に対立するものである。いずれにしても、無意識という深層を問題にしようとしている点では同じことである。
[外林大作・川幡政道]
『アンナ・フロイト著、外林大作訳『自我と防衛』第2版(1985・誠信書房)』▽『フロイト著、新宮一成訳「無意識」(『フロイト全集14』所収・2010・岩波書店)』
19世紀の終りころより,S.フロイト,ジャネ,A.アードラー,ユングらによって創始された心理学。神経症や精神病の治療という実際的な目的から生じてきたもので,人間はみずから意識しうる心的過程のみではなく,無意識的な心的過程をもつことを前提とし,後者について研究する心理学を総称して深層心理学という。深層心理学はその立場によって多くの学派に分かれており,フロイトは精神分析,ジャネは心理分析,アードラーは個人心理学,ユングは分析心理学と,それぞれ自分の学派に名づけている。これらの創始者に続いて多くの後継者と分派が生じてきた。アメリカにおける文化・社会的な面を重視する新フロイト派,スイス,ドイツにおける実存哲学と結びついた実存分析などがそれである。人間の無意識内における力動性,それが意識行動に及ぼす影響を重視し,自由連想法,夢分析などにより心理療法を行う。
執筆者:河合 隼雄
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…超常現象を引き起こす原因は被験者の能力(いわゆる超能力,超心理学ではサイpsi能力とよぶ)にあるが,それは無意識の領域に潜在するものと考えられる。もともと,フロイトやユングのような深層心理学者たちは,臨床的経験から超常現象に関心をもち,心霊現象についての実験も行っていた。今日では,深層心理学と生理学的心理学の研究が進歩した結果,サイ能力は神経や無意識のはたらきと関係が深いものと考えられてきている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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