改訂新版 世界大百科事典 「フォース橋」の意味・わかりやすい解説
フォース橋 (フォースきょう)
Forth Bridge
イギリス,スコットランドのエジンバラ近くのフォース湾に架けられている橋。並行して二つの長大橋があり,いわゆるフォース橋とは1890年に完成した古い鉄道橋のほうをいい,全長2528mのカンチレバー形式鋼トラス橋である。二つの主径間はともに521mで,これは現在でもつり橋を除けば同形式のカナダのケベック橋に次ぐ世界第2の支間長である。トラスの圧縮部材は円形断面鋼管で,もっとも大きいものは直径366cmに及ぶ。5万6000tの鋼材をつぎ込んだこの橋の恐竜のような姿は,当時の一部の人からは“醜さの極致”という非難も受けたが,迫力と重厚さは見る人にそれなりの感銘を与えずにはおかない。この点,同時期に作られたパリのエッフェル塔と双へきをなす。本橋には1879年に起こったスコットランド,テイ川河口のテイ橋Tay Bridgeの風による落橋事故の教訓を生かしたJ.ファウラーとB.ベーカーの設計が採用された。
これに並んで架設されたフォース道路橋は,1964年に開通した中央径間長1006mのつり橋である。両側の歩道と4車線の車道を支えるこの橋は,一見伝統的なつり橋の形態をもつにすぎないように見えるが,イギリスとしては久方ぶりの経験であり,ヨーロッパで初めて1000mを超える支間長の橋であったため,慎重な風胴模型実験による検証が行われるとともに,当時の最新の技術が駆使された。
執筆者:伊藤 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報