日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファウラー」の意味・わかりやすい解説
ファウラー(William Alfred Fowler)
ふぁうらー
William Alfred Fowler
(1911―1995)
アメリカの物理学者。ピッツバーグに生まれる。オハイオ州立大学で最初は工学を学んだが、のち物理学に転向、1933年に卒業した。カリフォルニア工科大学大学院に進み、放射性元素の研究で1936年に博士号を取得した。同大学の研究員となり、準教授を経て、1946年に物理学教授に昇格した。1970年物理学主任教授に就任、1982年に退職して名誉教授となった。
原子物理学を研究、とくに星の内部構造とエネルギー源となる核反応の研究を進めた。ガモフのビッグ・バン理論を検討した結果、この理論では質量数8以上の安定した元素が生成されないことを証明した。そして、自然界にある炭素からウラニウムまでの元素は、ビッグ・バンで生じた水素やヘリウムから恒星の内部の核反応によって生成され、巨星の進化の終焉(しゅうえん)である超新星爆発によって宇宙に放出されるとした。また、超新星爆発前後に巨星内部で起こる、中性子捕獲による鉄より重い元素の合成過程を示した。これらの研究の成果により、ファウラーは天体物理学の進展に大きく貢献し、1983年には「宇宙における化学元素の形成過程での重要な核反応に関する理論的、実験的研究」によって、ノーベル物理学賞を受賞した。なお、同じくアメリカの天体物理学者で、「天体の構造と進化の物理的過程に関する理論研究」が認められたチャンドラセカールとの同時受賞であった。
[編集部 2018年10月19日]
ファウラー(Sir Ralph Howard Fowler)
ふぁうらー
Sir Ralph Howard Fowler
(1889―1944)
イギリスの理論物理学者。1932年ケンブリッジ大学数理物理学教授。統計力学の原理とその物性への適用についての業績、とくに統計力学におけるダーウィン‐ファウラーの方法で著名である。またバナールと共同で水および氷の分子論的構造の研究を行い(1933)、X線解析の結果から液体の水の中での最近接分子配置に関する正四面体構造を初めて提示、これは今日の水の液体構造研究の出発点となった。著書『統計力学』Statistical Mechanics(1936)およびグーゲンハイムE. A. Guggenheim(1901―1970)との共著による『統計熱力学』Statistical Thermodynamics(1939)は名著として知られている。
[常盤野和男]