日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブッツァーティ」の意味・わかりやすい解説
ブッツァーティ
ぶっつぁーてぃ
Dino Buzzati
(1906―1972)
イタリアの小説家。ミラノ大学卒業後、ミラノの大手新聞社に勤め、終生ジャーナリストとして活動。世界各地での特派員生活が豊富で、わけてもアフリカの砂漠の体験は作品創造の大きなモチーフとなった。処女作『山のバルナボ』(1933)で注目され、1940年、『タタール人の砂漠』によって資質を開花、アレゴリーとリアリティーが高い緊張度に達した、特異な感覚の物語作者として地位を確立。以後、その延長線上に『7人の使者』(1942)、『60短編集』(1958)などを発表、「イタリアのカフカ」と評された。その一方に、『ある愛』(1963)に代表される、現代の都市生活者の生をめぐるリアリズム系列の作品がある。趣味の山登りは作品のうえにも顕著に現れ、また画家として玄人(くろうと)はだしの腕をふるい、童画物語の著作もあり、さらに舞台美術も手がけたという、実に多才な作家であった。
[古賀弘人]
『脇功訳『タタール人の砂漠』(1992・松籟社)』▽『脇功訳『7人の使者』(1974・河出書房新社)』