アレゴリー(読み)あれごりー(英語表記)allegory

翻訳|allegory

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレゴリー」の意味・わかりやすい解説

アレゴリー
allegory

寓意語源ギリシア語 allos (他) +agoreuein (話す) 。シンボルやイメージを用いて表面的意味より深い意味を伝えようとするもので,拡大された隠喩といえる。たとえ話 parable寓話 fableより複雑で長く,ある物語の展開が同時に別の事件や思想を組立て,両者の間に明瞭で継続的な関連が認められる場合をいう。その基本的手法は擬人法であり,人物が抽象的観念を表わす。 13~14世紀に多くの例がみられ,世俗的な『薔薇物語』や宗教的な『農夫ピアズの幻』などを代表とするが,道徳劇エブリマン』,ダンテ叙事詩神曲』,スペンサーロマンス神仙女王』,バニヤンの小説『天路歴程』など各種の分野に広く見出される。アレゴリーには2つの型がある。1つは歴史的政治的なもので,物語に出てくる以外の人物や事件に意味の重点がおかれるもの。他方は倫理的宗教的なもので,物語中の人物や事件に一連の思想的内容が付加されているもの。単純なアレゴリーの場合,物語は完全に教訓に従属するが,複雑な倫理的アレゴリーは崇高な調子をもち,物語によって楽しませながら教化の目的を果す。政治的歴史的アレゴリーは皮肉な調子をもつ傾向があり,風刺と密接に結びつくことが多い (たとえばドライデンの『アブサロムとアキトフェル』) 。アレゴリー解釈は文学批評における特殊な方法論を生み出している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アレゴリー」の意味・わかりやすい解説

アレゴリー
あれごりー
allegory

寓喩(ぐうゆ)、寓意物語。ギリシア語のアレーゴリアallegoria(別な話し方)に由来し、抽象的な概念をそのまま表現せずに、別の具体的なイメージを用いて表現する文学形式。メタフォーmetaphor(隠喩)を拡大、発展させたものともいえる。パラブルparable(たとえ話)やフェイブルfable(寓話)よりも複雑で長く、構想力に富み、しばしば擬人化がみられる。聖書やダンテの『神曲』はいくつかの異なったアレゴリー、つまり重層的な寓喩として解釈される。代表的作品としては、中世の道徳劇や『バラ物語』、近世のE・スペンサーの『妖精(ようせい)女王』やバニヤンの『天路歴程』、20世紀ではG・オーウェルの『動物農場』がある。

[船戸英夫]

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