ブラック企業(読み)ブラックキギョウ

デジタル大辞泉 「ブラック企業」の意味・読み・例文・類語

ブラック‐きぎょう〔‐キゲフ〕【ブラック企業】

労働条件や就業環境が劣悪で、従業員に過重な負担を強いる企業や法人。長時間労働や過剰なノルマの常態化、セクハラパワハラの放置、法令に抵触する営業行為の強要といった反社会的な実態がある。ブラック会社。→ホワイト企業
[補説]こうした企業は、もっぱら組織の利益を優先し、従業員の人格や人権には顧慮しない。新卒者や第二新卒者など若年層を大量に採用するが、適切な教育を行わず、一部の役に立つ人材だけ残して大半を退職に追い込むなど、使い捨てにする。そのため、社員の平均勤続年数は短く、離職率が高い。

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知恵蔵 「ブラック企業」の解説

ブラック企業

労働者酷使・選別し、使い捨てにする企業。「ブラック会社」ともいう。
度を超えた長時間労働やノルマを課し、耐え抜いた者だけを引き上げ、落伍(らくご)者に対しては、業務とは無関係な研修やパワハラ、セクハラなどで肉体・精神を追い詰め、戦略的に「自主退職」へと追い込む。金融危機の影響で就職難が深刻化した2000年代後半から、こうした悪辣(あくらつ)な企業を指すようになった。その明確な定義はないものの、以上のような「合法か否か」の境目をはるかに超えた「劣悪な労働」「峻烈(しゅんれつ)な選別」「非情な使い捨て」などが特徴で、企業規模や知名度とは関係なく、入社3年内の離職率の高さや社員の年齢構成(30~40代が極端に少ない等)が1つの指標とされる。なお、かつては反社会的企業(暴力団系やそのフロント企業など)を指す言葉だった。
法令違反の長時間労働やサービス残業、労使の合意を経ない転勤命令などは、1970年代から問題視されており、多くの日本企業には元よりブラック的な体質があったという見方もある。他方、こうした強要に忍従した労働者の「滅私奉公」は、企業が終身雇用年功賃金を保証するという「暗黙の合意」の上に成り立っていたのであり、日本型雇用慣行が崩壊に進み、新卒採用でも買い手側が圧倒的優位にある現在、労働者とりわけ若年労働者を蝕(むしば)む新たな社会問題として対処すべきという指摘もある。

(大迫秀樹 フリー編集者 / 2013年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラック企業」の意味・わかりやすい解説

ブラック企業
ぶらっくきぎょう

従業員に過重なノルマや度を超した長時間のサービス残業を課すなど違法性の高い働き方を強いたり、精神的ないじめや嫌がらせ賃金未払いなどが常態化しているような企業の総称。ブラック会社ともいう。従業員を酷使し、使い捨て、自主退職に追い込む企業をはじめ、従業員の退職希望を拒否し、失業保険申請に必要な離職票を出さないまま働かせ続ける企業などもある。若者の就職難が社会問題となった2000年代後半から聞かれるようになり、インターネット上のスラング(隠語)として広まった。もともとは暴力団などと関係し、違法な営業行為を繰り返すような反社会的な企業をさす呼称であった。

 こうしたなか、厚生労働省は2013年(平成25)より、中小企業を対象に、「若者応援企業宣言事業」を開始した。各地の労働局を通じ、若者(35歳未満)の採用実績や定着の状況、月平均の残業時間などの情報を開示することで、中小企業と就職希望の若者とのマッチングを確実にすると同時に、ブラック企業による被害を減らすこともねらいの一つだといわれている。協力企業は求人情報だけではなく若者応援企業として、労働局のホームページで紹介される。

[編集部]

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人事労務用語辞典 「ブラック企業」の解説

ブラック企業

「ブラック企業」とは、従業員に対して、心身の過重負担や極端な長時間勤務など劣悪な環境での労働を強いて改善しない体質をもち、それゆえに入社を勧められない、あるいは早期の退職が勧奨されるような企業を総称する言葉です。若者の雇用悪化を背景に、ここ数年、インターネットなどを通じて広まり浸透しました。具体的には、労働法や関係諸法に抵触する可能性があるグレーゾーンな条件での労働や違法性の濃い営業行為を意図的・恣意的に従業員に強いたり、いわゆるパワーハラスメントを常套手段として本来業務とは無関係な部分での非合理的負担を従業員に強制したりする企業や法人を指します。
(2013/1/28掲載)

出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「ブラック企業」の解説

ブラック企業

今野晴貴によるノンフィクション。副題「日本を食いつぶす妖怪」。2012年刊行。2013年、第13回大仏次郎論壇賞受賞。

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